第15回 早わかりクラシック音楽講座 2008/4/29(Tue)

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「天才メンデルスゾーンの光と翳~ヴァイオリン協奏曲ホ短調」

■内容
≪  天才メンデルスゾーンの光と翳~ヴァイオリン協奏曲ホ短調  ≫
第1部:ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
第2部:ユダヤ人メンデルスゾーンの生い立ち、社会的背景など
第3部:ヴァイオリン協奏曲ホ短調を聴く
-お茶とお菓子付-

第1部
□ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
①メンデルスゾーン:春の歌作品62-6
②ショパン:バラード第1番ト短調作品23

メンデルスゾーンの「無言歌集」の中でも特に有名な「春の歌」。作曲家が1842年に創作したとても愛らしく楽しい趣をもつ春めいた小品。そして、ほぼ同時代を生きたピアノの詩人ショパンが1831年から数年かけて作曲したといわれる名曲バラード第1番を披露しました。両曲とも前記ロマン派を代表する傑作です。

写真 001

第2部
□メンデルスゾーンの生い立ち、社会的背景など(ユダヤ人としての苦悩など)
予定していた話のいくつかを落としてしまいましたが、富裕な家庭に育った優等生作曲家メンデルスゾーンのもつ「翳」の部分に焦点をあて生い立ちから推測される問題を念頭に置きながら、神童といわれた作曲家が残した名曲を聴きました。ユダヤ人であったことから受けた差別、母親の厳しい教育。そして大人になっても「受身」的であった彼の性格が楽曲に反映されているように思います。

参考CD
①劇付随音楽「真夏の夜の夢」~序曲、結婚行進曲
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

写真 004

第3部
□ヴァイオリン協奏曲ホ短調を聴く
甘美なメロディを持つ傑作ヴァイオリン協奏曲をいくつかの演奏を比較しながら全曲を通しで聴きました。作曲家晩年に(とはいっても30歳代ですが)6年という時間を費やして書かれたこの名作は、形式も非常にわかりやすく、クラシック音楽入門者にとってとっつきやすい楽曲です。

①チョン・キョン=ファ(ヴァイオリン)、シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団
比較試聴(冒頭)
②アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
③フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)、レオ・ブレッヒ指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団

写真 005

比較試聴の結果、人気があったのは何とクライスラー盤。1927年のSP復刻であるゆえ、当然音は貧しい。しかし、貧しいながら鑑賞には十分耐えうる音質で、針音とともに聴こえてくるノスタルジックで甘美なヴァイオリンの旋律は第2次世界大戦前の古き良きヨーロッパの匂いが香ります。この後、数年でナチスの台頭によりメンデルスゾーンは「退廃作曲家」のレッテルを貼られ、表舞台から当面消えることになります。

今回は6名の方にご参加いただき、いつもとは違った風情でこじんまりと会を進行しました。終了後、ビールと料理を囲み22:00過ぎまで語り。これが何といっても楽しい!昨年日比谷公会堂で催された井上道義氏のショスタコ全曲演奏会に話が及び、誰かのショスタコを聴いてみたいという声を合図に、ムラヴィンスキーの指揮「革命」フィナーレをかけたり、メンデルスゾーンがバッハ再評価の架け橋となった話から、2ヶ月前にとりあげたJ.S.バッハの無伴奏モノをかけてみたり、と良い音楽を聴きながら談笑する楽しさここに極まれり(大袈裟!)、といった感じでした。
次回はリクエストにお応えし、モーツァルトの「ジュピター」をとりあげます。お楽しみに!