第22回 早わかりクラシック音楽講座 2009/1/11(Sun)

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「チャイコフスキーの死の謎~最後の交響曲『悲愴』」

内容
≪  チャイコフスキーの死の謎~最後の交響曲『悲愴』  ≫
第1部:ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
第2部:チャイコフスキーの人柄、ホモセクシャル、女性遍歴・・・
第3部:交響曲第6番「悲愴」を聴く
-お茶と自家製ぜんざい付-

第1部
□ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
チャイコフスキー:12の性格的小品「四季」作品37bから
①5月「白夜」
なんて安らぎに満ちた夜だろう! ありがとう、北のふるさと故郷よ!
氷におおわれた王国から 雪の降りしきる王国から
5月よ、君はなんてすがすが清清しく、鮮やかに飛びたつのだろう!
―フェート
②6月「舟歌」
岸辺に出よう。
僕らの足に波はくちづけ、秘めやかな愁いの星が 僕らの上に光るだろう。
―プレシシェーエフ

1876年~77年に出版社の依頼で作曲された美しいピアノ曲集から2曲を披露。チャイコフスキーのピアノ曲そのものは一般的には採り上げられることは少ないように思いますが、ロシアの広大な自然を髣髴とさせる、聴けば聴くほど味わい深い音楽です。愛知とし子お得意のロシアものですが、残念ながら録音ミスを犯してしまいました(涙)。

写真 001

第2部
□チャイコフスキーの人柄、ホモセクシャル、女性遍歴・・・
生涯に5000通以上もの手紙を書き、そのほとんどが現存しているというチャイコフスキーの人生をざっくりと振り返ってみました。彼のホモセクシャル説は非常に有名ですが、自身のそういう性癖についてまでもリアルに手紙や日記で告白しているところをみると、非常にオープンで素直な性格だったのではないかという印象を持ちます。そのあたりの性質が彼の音楽に見事に反映されており、100年以上経た現代においてもこれだけ愛好されている理由がわかるような気がします。人間的には非常に魅力的な人だったのかもしれませんね。

一方、女性に対しては、その潔癖性からか非常に冷たかったという印象を受けてしまいます。ティーンエイジャーのときに母親を失くし、母親への満たされない愛というものが彼の人生を支配します。アルトーという5歳年長のソプラノ歌手との束の間の恋も、一方的に棄てられ破談になってしまいます。深い心の瑕を負ったチャイコフスキーは、おそらく以後女性に心を開くことはなかったのかもしれません(パトロンであったフォン・メック夫人も短いながら結婚生活を送った妻アントニーナも、生涯お金に困っていたという(不思議にも・・)チャイコフスキーにとっては、「金づる」のような存在だったのかもしれません)。

「悲愴」交響曲を聴く前にちょっと一服。1876年12月、ニコライ・ルビンシテインの主催するパーティーで隣に座る文豪トルストイが涙したという音楽。この大文豪を尊敬していたという作曲家にとってその事実は飛び上がるほど嬉しく感動的な事実だったようです。

①弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11~第2楽章アンダンテ・カンタービレ
ボロディン弦楽四重奏団

とても有名な美しい音楽。弱音器をつけたヴァイオリンの撫でるような音色がたまらない。

写真 006

第3部
□交響曲第6番「悲愴」を聴く
②交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」
フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団

「悲愴」交響曲作曲の経緯、初演当日のこと、そして初演からわずか9日後に急逝したチャイコフスキーのもっていた「死への不安」などについてお話をし、1楽章ずつじっくりと聴いてみました。

今回の講座では、ほぼ初めて「悲愴」交響曲を聴くという方が大勢いらしたのでとても新鮮でした。ある方は、第1楽章再現部冒頭のffの大音量で本当にびっくりされたり・・・(笑)、「悲愴」というタイトルにも関わらず、あまり「悲愴」という感じがしなかったという意見があったり、私的にもとても新鮮でした。あるアニメ好きの方が感想で、「銀河鉄道999」の映画版で主人公の鉄郎とメーテルが別れるシーンで第1楽章後半に似た音楽がBGMとして流れるということをおっしゃていました。なるほど「パクリ」かもしれませんが、楽曲を聴いて、イメージする映像なども人それぞれ違うんだということを実感させられました。
それにしても久しぶりに真面目に聴くとやはり素晴らしい音楽です。フィナーレの慟哭など思わずのけ反ってしまうほどです。

自分が生み出したどの作品に対してもその瞬間ベストを尽くしたチャイコフスキーの生き方。それは、過去をくよくよせず、未来に不安を感じながらではなく、自分軸をしっかりさせ、「今を一生懸命生きる」ということを我々に教えてくれるようです。

写真 008

終了後は、恒例の懇親会。2009年最初の講座ということもあり、さながら「新年会」という雰囲気で盛り上がりました。人気の「くるみ割り人形」組曲や「1812年」序曲などをBGMにビールを飲みながらおでんをつつく。とても愉快なひとときでした。

次回は、シューマンをとりあげる予定です。乞うご期待!