第46回 早わかりクラシック音楽講座 2011/7/24(Sun)

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「ソウルメイト姉弟作曲家ファニー&フェリックス・メンデルスゾーン」

内容
≪ ソウルメイト姉弟作曲家ファニー&フェリックス・メンデルスゾーン ≫
第1部:音浴じかん(Piano:愛知とし子)
第2部:フェリックス・メンデルスゾーンのこと、生い立ち、作品
第3部:ファニー・メンデルスゾーンのこと、作品
-お茶とお菓子付-

今回の講座では、愛知とし子による「音浴じかん」を体感していただきました。

第1部
□音浴じかん(Piano:愛知とし子)
ピアノの下に潜っての、その名の通り「音を浴びる」体験は何物にも代えがたいものでした。70%が水分である身体は音が伝わりやすく、まさに直接に共鳴するという感じです。このわずか40分ほどの体験に自分自身を取り戻せる貴重なポイントがあるように思われます。懐かしい思い出、今の自分、そして未来への希望。様々な思いが錯綜します。
音楽が人々の心を癒すというのは真実ですね。
第2部
□フェリックス・メンデルスゾーンのこと、生い立ち、作品
講座のスタートに、有名なヴァイオリン協奏曲から。
①メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64~第1楽章
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

いわゆる今日のクラシック音楽の基礎を作った早熟の天才、フェリックス・メンデルスゾーンを一言で表すならばそういう表現になります。モーツァルトの再来と騒がれた少年時代に既に完成された作品を数々生み出している彼も、実は大変に挫折や苦悩を抱えていました。例えば、ユダヤ人であることへの差別と偏見。そして父母からの厳しいしつけと教育。彼の人生について調べれば調べるほど裕福な家庭に育った単なるお坊ちゃん作曲家ではないということがよくわかり、多くの作品を含めメンデルスゾーンという作曲家が随分誤解されているのではないかと残念でなりません。

②「真夏の夜の夢」序曲作品21
③劇付随音楽「真夏の夜の夢」作品61~結婚行進曲
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

若干17歳で作曲した「真夏の夜の夢」序曲。幸福感に満ちた感情を呼び覚ます傑作。とても10代の少年が書いたとは思えない音楽ですが、もともと日曜音楽会のためにファニーと連弾するために書かれた作品故、おそらく姉ファニーの音楽的アドバイスも相当入っているのではないかと推測されます。プロイセン国王に気に入られ、「真夏の夜の夢」の劇付随音楽を作曲するよう命じられた際序曲はそのまま転用されました。ここでは有名な「ウェディング・マーチ」を聴いていただきました。

メンデルスゾーンの功績はいくつもありますが、最大のものはやはりバッハ復興への尽力だと考えられます。14歳の時に親戚から贈られた「マタイ受難曲」の楽譜を研究し、その価値を世に知らしめるために1829年に復活上演したのです(当時バッハはすっかり忘れられた作曲家だった)。メンデルスゾーンの存在なくして今日のクラシック音楽界なしといっても言い過ぎではないことがこういうところからも理解できます。

④J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV244~第47番アリア「憐れみたまえ、わが神よ」
⑤J.S. バッハ:マタイ受難曲BWV244~第78番終結合唱
ヘルタ・テッパー(アルト)
カール・リヒター指揮ミュンヘン少年合唱団、ミュンヘン・バッハ合唱団&管弦楽団

「マタイ」については言うことなし。ただひたすらその音楽に身を沈めるべし。今回の講座でもただただじっくりとその音楽を味わっていただきました。

そして、第3部「ファニーのこと」に移る前に、明らかにファニーの作品が混在しているであろうといわれる「無言歌集」を。実際にはどの作品がファニーのものなのか定かではありませんが、ここでは有名な「春の歌」。

⑥メンデルスゾーン:無言歌集~「春の歌」作品62-2
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)

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休憩

第3部
□ファニー・メンデルスゾーンのこと、作品
まずはファニーの天才を感じていただくために彼女のピアノ作品集から。

⑦ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:「アレグロ・モルト」ハ短調、「小夜想曲」ト短調
ヒーザー・シュミット(ピアノ)

フェリックスとはまた違ったニュアンスを湛えた音楽。劇的で感情の奔流が直接に心に響きます。いかにフェリックスがファニーから影響を受けたかは音楽を聴くとよくわかりますが、残された日記などを丁寧に見ていくことで、姉弟が互いを必要としており、音楽作品についてもそれぞれの存在なくして成り立たなかったであろうことも容易に推測されます。

ところで、ファニーとフェリックスはほぼ同時期に亡くなります。脳卒中で急死したファニーの死を聴いたフェリックスはその場で卒倒したそうですが、以後全くやる気を失せてしまい、ほとんど廃人と化してしまったようにいわれています。数ヶ月後、ようやく気力を振り絞り作曲した最後の弦楽四重奏曲には悲しみが充溢します。これこそまさにフェリックスが姉のアドバイスなくして書いた一品!
今回は、ファニーが亡くなる前日に残したといわれる歌曲とあわせて聴いてみました。

⑧ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル:歌曲「山の喜び」
ドロテア・クラクストン(ソプラノ)
バベッテ・ドルン(ピアノ)

⑨フェリックス・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番ヘ短調作品80~第1楽章
ケルビーニ四重奏団

まだまだ生きる希望に満ちた「山の喜び」に対し、もうこの世とのお別れを自ら宣告するような弦楽四重奏曲!素晴らしい音楽たちです。

fannyhensel

最後に、姉弟2人が子どもの頃から憧れたイタリアにインスパイアされ、フェリックスが書いた名曲を全曲通しで!

⑩メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」
クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団

今回も素晴らしい時間でした!ありがとうございました。