6月 14
クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管のブルックナー交響曲第6番(1964.11録音)を聴いて思ふ
「神との対話」のために、ブルックナーは教会音楽を作曲し、「人間たちとの対話」のために、交響曲を作曲した。アントーン・ブルックナーの強力な個性において統一されている二つの異なった世界は、神に、心寄せる深い信仰について同時に、俗世に開かれた心ばえについて語っている。双方が強力な言葉によってわれわれに語りかけてくる。我々はその相方を、巨匠が考えた通りに受容しようではないか。教会空間においては神に捧げられたものを、俗世の空間においては人間に贈られたものを。
(レオポルト・ノヴァーク/礒山雅訳「ブルックナーにおける交響様式と教会様式」)
~「音楽の手帖 ブルックナー」(青土社)P199
清濁あわせ飲むブルックナー。
アントン・ブルックナーの6番目の交響曲は、実は渾身の、大変な傑作なのではないかと今更ながら思った。ベートーヴェンでいうところの8番目の交響曲に比肩する、一見コンパクトながら極めてバランス良く、地味ながら慈愛に満ちる名曲とでもいうのか。