きれいな夕焼けを見て、F-Dの「夕星の歌」を聴いて思ふ

wagner_tannhauser_konwitschny涙が出るほど美しいフィッシャー=ディースカウ扮するヴォルフラムの「夕星の歌」。ディースカウの歌は上手過ぎて云々、理知的過ぎて云々などいろいろ言われるけれど、黄昏時の燃えるような夕焼けを見て、思わず彼の歌う「夕星」を思い出したくらいだから、あの整然とした冷静な響きの中に何とも言えぬ熱い思いが巧みに表現されていて、やっぱりフィッシャー=ディースカウは不世出だとあらためて確信する。

死の予感の如く夕闇が地を蔽い、
黒き衣もて谷をかぶせる。
かの高みを憧れる魂は
夜陰と恐怖の飛行をおそれている。
この時、お前は現れる!最愛の星よ。

ここでは伴奏するベルリン・シュターツオーパーの深く生々しい弦の美しさも見逃せない。

フランツ・コンヴィチュニー指揮する「タンホイザー」を聴いた。歌手陣の錚々たる顔ぶれ。やっぱり僕はつい第3幕に惹かれる。ここには悲哀と愛と、俗人的色情と敬虔な祈りと・・・、あらゆる人間感情が詰め込まれているから。

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」
ゴットロープ・フリック(領主ヘルマン、バス)
ハンス・ホップ(タンホイザー、テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(ヴォルフラム、バリトン)
フリッツ・ヴンダーリヒ(ヴァルター、テノール)
ゲルハルト・ウンガー(ハインリヒ、テノール)
エリーザベト・グリュンマー(エリーザベト、ソプラノ)
マリアンネ・シェヒ(ヴェーヌス、ソプラノ)ほか
フランツ・コンヴィチュニー指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団&合唱団(1960.10.17-21録音)

第3幕導入曲の意味深さ。その後に続くヴォルフラムのアリア。密かにエリーザベトを想う気持ちと、タンホイザーの無事ローマからの帰還を祈る思いが錯綜する。何と自己犠牲的なこの複雑な心情のうちに見るヴォルフラムの博愛。そして、エリーザベトとのやり取り(グリュンマーの歌唱も素晴らしい!)の最中に近づく、救済を象徴する変ホ長調で歌われる「巡礼の合唱」!!!このシーンは完全にワーグナーの勝利だ。

ああ、わがやさしの夕星よ、私はお前に
いつも快くあいさつを送ったのだ。
彼女がお前の下を通る時、
彼女を裏切らぬ心もてあいさつを送れ、
天国の天使となるべく、
彼女が地上の谷より姿を消すまで!

「夕星の歌」が染みる。
ハンス・ホップによる、タンホイザーが自身の内側にある聖俗の葛藤を歌う「ローマ語り」はどうにもいまひとつ響かない。

※太字「夕星の歌」の訳は「名作オペラブックス16『タンホイザー』」より抜粋。

 


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