ザビーネ・マイヤーのブラームス「クラリネット五重奏曲」を聴いて思ふ

brahms_clarinet_quintet_meyer_abqすっかり秋めく。
そういえば9月もほぼ終わり。
ようやくヨハネス・ブラームスが似つかわしい季節になる。
青年期も壮年期も、そして老境に至ってもブラームスの音楽は侘び寂の極致。シューマン夫妻が20歳のヨハネスに初めて会い、そして彼の演奏を聴いた時何を思ったのか?すでに「でき上がった」天才の出現に驚いたことだろう。

寂しさと孤独感に埋もれながら、これほどに温かい音楽を生み出した人って他にいないのでは?彼は頑固で偏屈で、交流下手だったろうけれど、深層では人一倍人を愛していた。でないとああいう音楽は絶対に書けぬ。愛情も憎悪も、哀しみも喜びも、様々な感情の奔流がある「感情音楽」。これこそまさにワーグナーをして言わしめた「アニマ音楽」なり。

1891年3月、マイニンゲンにおけるリヒャルト・ミュールフェルトとの出逢いが、彼の創作意欲をいま一度奮い立たせた。人との邂逅がモティベーションになったこと自体が、明らかにブラームスの根底にあった「愛」というものを示す。

ブラームス:
・クラリネット五重奏曲ロ短調作品115(1998.3Live)
・弦楽五重奏曲第2番ト長調作品111(1998.6Live)
ザビーネ・マイヤー(クラリネット)
ハリオルフ・シュリヒティヒ(ヴィオラ)
アルバン・ベルク四重奏団

ザビーネ・マイヤーの音ってとても男性的。いまだに例のベルリン・フィルでの騒動を僕などは思い出すが、ベルリン・フィル側の「厚みと融合性が欠ける」という反対意見が大勢を占めた理由が何だかわからぬでもない。あくまでソリストとしての資質が高い人なんだろう。
とはいえ、このブラームスはなかなか良い。フィナーレにおける第1楽章主題の回想シーンなど懐かしさの極み。これほどに想いのこもった音色があろうか。
ただし、何と言っても白眉は第2楽章だ。それこそベートーヴェンのアダージョに匹敵するアダージョ。数多あるブラームスの作品の中でも最も美しく、最も深い音楽のひとつだと僕は思う。

そしてト長調の弦楽五重奏曲。内声部に厚みのある五重奏曲や六重奏曲こそブラームスの十八番とするところだが、1890年に書かれたと言われるこの作品はある意味辞世の音楽だった。実際、作品111の上梓後、急速に創作意欲の衰えを自覚し、彼は遺書すら認めるのだから。
しかし、ここには何とも強烈な「動物的精気」が宿る。

 


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