ロジェストヴェンスキーのショスタコーヴィチ管弦楽曲集を聴いて思ふ

shostakovich_orchestra_works_rozhdestvensky決してシニカルで深刻ぶらないショスタコーヴィチというのも面白い。いわゆる体制に迎合した結果のポピュラー音楽だと表現してもいいのかもしれないが、映画音楽やジャズ音楽など、とにかくすべてが愉快痛快。彼は大衆の心をつかむ術を生まれながらに持っていた天才なんだ。当然そういう素養があるがゆえに一般の聴き手が理解困難ともいえる高度な音楽も一方で容易に生み出すことができた。

ロジェストヴェンスキー編曲による映画音楽「ひとり」管弦楽組曲。3曲、わずか12分ほどの作品だけれど、冒頭から古き良き昭和の時代に通じる何とも言えない「明朗さ」に思わず笑みがこぼれる。あわせて耳にしたのが民謡の編曲やスカルラッティのソナタの編曲版などを収録した1枚。ここにはソビエト連邦の暗黒の時代の心象をいかにも忘れ去るかのような「希望」が溢れる。

ショスタコーヴィチ:
・プーシキンの詩「春よ、春よ」によるロマンス作品128
エフゲニー・ネストレンコ(バス)
ソビエト国立文化省交響楽団(1985年録音)
・イギリスとアメリカの8つの民謡
エレーナ・イヴァノヴァ(ソプラノ)
ソビエト国立文化省交響楽団(1989年録音)
・ジャズバンドのための組曲第1番
ソリスト・アンサンブル(1985年)
・コミック・オペラ「ビッグ・ライトニング」から9曲
ユーリ・フリオフ、ヴィクトル・グコフ、ヴィクトル・ルミャンツェフ(テノール)
ニコライ・コノワロフ、アナトリ・オブラツォフ(バス)
ニコライ・ミャソードフ(バリトン)
ソビエト国立文化省交響楽団&合唱団(1984年)
・ドメニコ・スカルラッティの2つの小品作品17
・ベートーヴェンの「のみの歌」(編曲)
ソリスト・アンサンブル(1979年)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「楽しい列車」
モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団(1979年)
・リムスキ=コルサコフの「私はほら穴で君を待っていた」(編曲)
ソビエト国立交響楽団(1979年)
・タヒチ・トロット(ユーマンズの「2人でお茶を」編曲)作品16
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1979年)
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)

春よ春よ、愛の時よ
お前がやってきて私はとてもやりきれない
なんともつらいこの気持ちが
私の魂にも、血潮にもあふれる
(藤井宏行訳)~梅丘歌曲会館「詩と音楽」

光によって闇は強調される。光を怖れる詩人の想いを見事に音化したショスタコーヴィチの天才。そして、スコットランド民謡「故郷の空(ライ麦の畑で)」の懐かしさ!!さらに「ジャズ組曲」の愉悦感!!
何より僕が驚いたのはスカルラッティのソナタホ長調K.20の管弦楽編曲版。あの清澄なピアノの響きがショスタコーヴィチの手でまるで木管による「冗談音楽」の類にアレンジされているんだ。これこそ二枚舌的才能の為す技なり。

山本邦山氏が亡くなられた。ゲイリー・ピーコックらとともに録音した「銀界」は素晴らしいアルバムだった。合掌。

 


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