バイエルン国立歌劇場のルチア・ポップを聴いて思ふ

lucia_popp_bayerische朝から雨がさめざめと・・・。寒暖の差激しく、めっきり寒い。こういう日は「声」に限る。人の声、特に女声というのはどんな類の声質であれ包容力がある。そこに身を委ねるだけでほっこりと温かい気持ちに溢れるのだからその効用たるや・・・。

ルチア・ポップががんで亡くなったと知った時、少々落ち込んだ。とても好きだったから。
あれからもう20年超経過するのだと思うと、時の移ろいに驚くばかり。昨日の太陽と今日の霧雨も、流れる時間の中で「自然に」ただ在ることなんだと感心。

最初に聴いた(観た)のは1980年のカール・ベーム来日公演による「フィガロの結婚」でのスザンナ役(もちろんテレビで)。フィガロに扮するヘルマン・プライとの掛け合いが本当に素敵だった。先年、NHKからその時の映像がリリースされたけれど、あえて観ていない。10代のあの頃の麗しき「思い出」として脳裏に刻みつけたままにしておきたいから(この手のものは実際の演奏に感激するものの大抵持っていたイメージを覆されることが多いから。特にオペラなどはその傾向が強い)。

バイエルン国立歌劇場でのパフォーマンスの抜粋。

・リヒャルト・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」から
クレア・ワトソン(元帥夫人、ソプラノ)
ブリギッテ・ファスベンダー(オクターヴィアン、メゾソプラノ)
ルチア・ポップ(ゾフィー、ソプラノ)
カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1972.4.20Live)
・モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527から
ルッジェーロ・ライモンディ(ドン・ジョヴァンニ、バリトン)
ルチア・ポップ(ツェルリーナ、ソプラノ)
エンリーコ・フィッソーレ(マゼット、バス)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1973.7.12Live)
・モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492から
ルチア・ポップ(スザンナ、ソプラノ)
ヴォルフガング・ブレンデル(アルマヴィーヴァ伯爵、バリトン)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1983.7.13Live)
・ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」作品72から
ルチア・ポップ(マルツェリーネ、ソプラノ)
カール・ベーム指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1978.1.30Live)
・ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」から
ルチア・ポップ(フルート夫人、ソプラノ)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1983.10.15Live)
・リヒャルト・シュトラウス:楽劇「アラベラ」から
ルチア・ポップ(アラベラ、ソプラノ)
ヴォルフガング・ブレンデル(マンドリーカ、バリトン)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1983.12.25Live)
・プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」から
ルチア・ポップ(ラウレッタ、ソプラノ)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1982.12.17Live)

「ばらの騎士」、「アラベラ」をはじめとするシュトラウスのオペラでのポップの美しさはいかばかりか。単なる表面的な美しさでない。芯があり、重心が低く、下手をすると転ぶような危うさの中で、実に人間味のある「温かさ」に溢れるのである。いや、僕のこの稚拙な説明では「知らない人」には決してわかってもらえないかも。とにかく耳にしてほしい。

そして、「フィデリオ」第1幕におけるマルツェリーネの独白「あなたといっしょになれたら」の何という深みのある心情吐露。ここには希望が漲る。

さらに「フィガロ」第3幕における伯爵との駆け引き二重唱「ひどいぞ!どうして今まで私を」におけるポップの実にストレートで迷いのない歌。本当に表現力に富む。

圧巻は「ジャンニ・スキッキ」の有名なラウレッタのアリア「私のお父さん」!!独墺系歌劇の中にあって、一際異彩を放つこのプッチーニの歌唱こそにルチア・ポップの天才がある。伸びのある歌、感情が縦横に弾ける歌心!!

 


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