明石家さんまナレーション版「ピーターと狼」を聴いて思ふ

prokofiev_peter_samma僕は「8時だよ!全員集合」世代であり、「オレたちひょうきん族」世代でもある。それこそティーンエイジャーの頃からこれらの番組の世話に随分なった。1980年頃の「THE MANZAI」ブームの時もテレビを観ていないと学校で遅れをとったし、その流れで「笑ってる場合ですよ!」も時間が許せば必ず観ていた。ちなみに、その後番組である「笑っていいとも!」が始まったのは浪人時代のことで、それこそ大学に入学してからはしばしば観ていたものだから、かの番組の初期の時代を体験していたことになる。いまだに語り継がれるハプニングや懐かしいシーンもリアルに思い出せるほど。

そういえば、当時の「オールナイト・ニッポン」も実に豪華な顔ぶれで、少なくとも第1部が終了する午前3時までは眠い眼をこすりながら週に何日も起きていたことが懐かしい。水曜日はタモリで木曜日がビートたけし。そうそう、月曜日は中島みゆきだったか。ということは、週に3日は必ず聴いていたということ。タモリの最終回(1983年9月28日)もしっかり聴いた。何だか一つの時代が終わるようでとても残念な気持ちだった。

そういう事情もあり、まさか32年も続くとは思っていなかった「笑っていいとも!」が3月にいよいよ終了すると聞いてからは、とにかく録画し久しぶりにいろいろと観た。テレフォン・ショッキングで繰り広げられるタモリとゲストのトークはやっぱり面白かった。でも、Youtubeなどで初期の映像を確認して思ったのは、あの頃はタモリ自身にもいろいろな意味で毒が健在で、本当に個性的で、より一層面白かったのだということ。
あれは、本人の年齢の問題もあるのだろうが、時代背景というか空気感というか、そういうものがものすごく左右していたのかも。インターネットもパソコンもなく、もちろん携帯電話もない、ビデオ・デッキだってまだまだ一般家庭には浸透していなかったアナログな時代・・・。今昔の比較などするつもりはさらさらないが、「古き良き時代」と一言で片づけるのも惜しい、それほどに熱い時代だったと思うのだ。

ところで、だいぶ前に「紳竜の研究」を観たときはぶっ飛んだ。島田紳助のあまりに緻密な計算と先を読む力のすごさに度肝を抜かれた(18歳の時から漫才を熱心に研究し、自分の糧にしてきたわけだからアイディアや話術という意味で誰も敵うはずがないのだ)。しかもそれをいかにも自然に振る舞えるところが紳助の天才。今となっては、彼があまりに早い時期に引退を強いられたことが残念でならない。

なるほど、そういうことは明石家さんまについても然り。紳助とさんまはまったく資質の異なる、おそらくインプットやアウトプットの方法も正反対のタイプだが、2人とも実に面白い。彼らの掛け合いなどは見事な呼吸で、本当に最高の娯楽のひとつだと断言できるが、その彼らの面白さの妙は天才的アドリブ能力。瞬間的に繰り出される言葉の選び方、使い方、そして呼吸と間合い。どんなに計算しようが計算だけではなし得ない妙味。
例えば、記憶。彼らは過去の他愛もない話を実によく覚えている。とにかく引き出しが多い。そして、相手を貶したり、時に持ち上げたり、それらを言葉巧みに表現する。すべてが新鮮で、しかも濃密で、常に今を生きている。常にそういう印象を与えてくれるんだ。だから決して古びない。

さて、本題。
過日、小澤征爾指揮ボストン響によるプロコフィエフの「ピーターと狼」を採り上げた際、Facebook上で明石家さんまナレーション版の話題になった。そういえばそういうものがあったなと頭の片隅に記憶していたが、広告を見たリリース当時はほとんど「ゲテモノ」扱いで、まったく意にも介せずスルーしていたものだから、何とあの音盤の企画をされたのが仙波知司さんであることを最近になって知ったときには驚きと同時に、完璧に無視をしていた自分を恥じたほど。そもそもこんな企画を思いつくのは仙波さん以外にないのに・・・。

ということで、数日後に仙波さんからありがたいことにかの音盤を送っていただいた。
そして、ようやくじっくり聴いて思った。明石家さんまはさすがだと、本物だと、天才だと。
関西弁での絶妙な語り口と、ほとんど台本を無視してのアドリブ攻撃に抱腹絶倒。さんまがナレーターに選ばれた経緯を仙波さんから伺い、そして、録音現場でのやりとり、台本作者である佐野洋子さんと明石家さんまの対談など、詳しく明記されるブックレットを読み、このプロジェクトが真に一世一代のものであったことを確信した次第。遅まきながら聴くことができて本当に良かった。仙波さん、ありがとうございます。

プロコフィエフ:「ピーターと狼」作品67
佐野洋子/明石家さんま版
明石家さんま(語り)(1990.1録音)
英語版
イツァーク・パールマン(語り)
ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(1982.7録音)

ちなみに、メータとイスラエル・フィルの演奏。こちらはさほど特長なく(笑)、可もなく不可もなくという感じ。決して凡演ではないのだが。英語版によるパールマンの語り口もなかなかのものだし・・・。
この音盤の価値はやっぱりさんまの語りに尽きる。他では絶対に聴くことのできない「ピーターと狼」ということで。

 


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2 COMMENTS

畑山千恵子

何と、明石家さんまが「ピーターと狼」のナレーションをやったとはびっくりしました。それも、お笑いいっぱいとは凄い。子どもたちも大笑いで聴くでしょうね。坂本九のナレーションも素晴しいものでした。これも歴史に残る名ナレーションになるでしょう。

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岡本 浩和

>畑山千恵子様
はい、そうなんです。素晴らしいです。youtubeなどでご一聴を!おっしゃるとおり歴史に残る名ナレーションだと思います。

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