クレメンス・クラウスのシュトラウス・ファミリー「ワルツとポルカ集」に酔いしれる

strauss_family_2_krauss_vpo人間の「思考」がやはり「境界」を作っているようだ。
ヨーゼフ・ランナーやヨハン・シュトラウスⅠ世が活躍していた19世紀前半のウィーンにおいては、芸術音楽と大衆音楽は相互に影響を与え合うほどボーダーレスだったのだと。
ちなみに、前者を”E Musik (Ernst Musik=真面目音楽)”、後者を”U Musik (Unterhaltung Musik=娯楽音楽)”と表現するらしいが、この名称もおそらく後世の学者が付したもの。それにしても何が「真面目」で、何が「娯楽」なのか・・・。その区分け自体が何とも奇妙、不思議に思えてならない。

かの時代の、音楽が区別なく融和していた環境がウィンナ・ワルツを育む土壌となっていたことは重要だと「ウィンナ・ワルツ~ハプスブルク帝国の遺産」を著した加藤雅彦氏は指摘する。閉鎖的でも排他的でもないということ、何かが新しく生まれ、発展する過程において大切なのはそこにある。

久しぶりに陽光輝く晴れ間を見、途中夕立に遭遇するも、美しい満月を愛で、ウィンナ・ワルツに聴き惚れた。大御所クレメンス・クラウス指揮するデッカ盤(オーパス蔵による復刻)。流麗で味わい深い、60余年前の不滅の記録。

シュトラウス・ファミリー:ワルツとポルカ第2集
・ワルツ「美しき青きドナウ」作品314(ヨハンⅡ世)
・ポルカ「休暇旅行で」作品133(ヨーゼフ)
・ポルカ「騎手」作品278(ヨーゼフ)
・チャールダッシュ作品23(ヨハンⅡ世)
・ワルツ「我が家にて」作品361(ヨハンⅡ世)
・ポルカ「クラップヒェンの森」作品336(ヨハンⅡ世)
・ポルカ・マズルカ「町と田舎」作品322(ヨハンⅡ世)
・喜歌劇「こうもり」序曲(ヨハンⅡ世)
・ポルカ「狩り」作品373(ヨハンⅡ世)
・「アンネン・ポルカ」作品117(ヨハンⅡ世)
・ワルツ「芸術家の生涯」作品316(ヨハンⅡ世)
・「常動曲」作品257(ヨハンⅡ世)
・ポルカ「おしゃべりな可愛い口」作品245(ヨーゼフ)
・ワルツ「天体の音楽」作品235(ヨーゼフ)
・ラデツキー行進曲作品228(ヨハンⅠ世)
クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1950.6&9, 1952.5&9, 1953.12録音)

定番「美しく青きドナウ」はもちろんのことだが、僕は名ポルカ「クラップヒェンの森」やワルツ「天体の音楽」に惹かれる。絶妙なテンポと優雅で高貴な音調はクラウスならでは。
おそらくクラウス自身による語りかけで幕を下ろす(何と言っているのかドイツ語に疎いため不明)「常動曲」も見事な棒さばき。「こうもり」序曲は実に劇的でしかも柔らかく・・・。
しばしシュトラウス一家の舞踊音楽に酔う。
素敵な今日を終え、また素晴らしい明日を迎えるために・・・。


2 COMMENTS

畑山千恵子

ヴィーン・フィル、ニューイヤー・コンサートはクレメンス・クラウスが始めました。その後、ヴィリー・ボスコフスキーがヨハン・シュトラウスのようにヴァイオリンを弾きながら指揮を取りました。ボスコフスキーはワルツ全集の録音がありましたし、シュトラウスのオペレッタでは「こうもり」(フィッシャー・ディスカウがこうもり博士、ファルケを務めています)、「ヴィーンかたぎ」はCDで聴けますので、お聴きになることをお勧めいたします。

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