ヒリヤード・アンサンブルのトマス・タリスを聴いて思ふ

tallis_jeremiah_hilliard_ensemble再び16世紀イングランド王国の音楽を。
カトリックとプロテスタントの激しい対立の中を生きたトマス・タリス。外界が醜い争いに終始し、慈愛を失おうと、作曲家の内面は正直だ。ほとんど「哀しみ」だけを表出するような音調に満ちるが、そこに在るのは平和と鎮静を願う心。

教会音楽の場合、言葉の壁が大きい。イングランドの場合、ラテン語はカトリック向け、英語はプロテスタント向けと容易に判断できるが、音楽そのものはその壁を容易に超える。伝達手段としての言語は人間にとってなくてはならないものだが、思考(枠)の産物である言葉の限界もそこにはあり、言葉の功罪がはっきりと見え隠れする。作曲家の苦悩はいかばかりであったか。

今日のところは小難しく考えるのは止そう。
ともかくトマス・タリスの美しい音楽たちに、信仰の壁を超えてひたすら耳を傾けるのだ。

タリス:
・エレミアの哀歌
・モテトゥス「世の救い主よわれらを救いたまえ」
・モテトゥス「おお聖なる饗宴」
・4声のためのミサ曲
・モテトゥス「主よ、我が罪を消し去りたまえ」
ポール・ヒリアー指揮ヒリヤード・アンサンブル
デイヴィッド・ジェームズ(カウンターテノール)
ジョン・ポッター(テノール)
ロジャーズ・カーヴィー=クランプ(テノール)
ポール・ヒリアー(バリトン)
マイケル・ジョージ(バス)

男声アンサンブルによるアカペラは、声に異質な部分がないせいか音の純度が高く、聴いていて一向に疲れない。何というハーモニーの妙。しかし、その分、宗教作品であるにもかかわらず、心や感情があからさまに表出するのも確か。ヒリヤード・アンサンブル然り。
どこを切り取っても、あるのはカトリック教徒の「抑圧」と「哀しみ」だ。

主よ、私の罪を消し去ってください、
私が無知な若い頃に犯した罪を。
悔い改める者に恩恵を垂れてください。
あなたは私の神ですから
私の魂はあなただけを信じます。
(対訳:吉村恒)

美しい・・・。

 

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