ジャン=クリストフ・スピノジは何だかカルロス・クライバーを意識しているよう。長身の体躯から繰り出される大ぶりの合図は、いまひとつ繊細さと優雅さを欠くものの、出て来た音楽の前進性と躍動感にかつての天才の姿を重ね合せた。
ロッシーニの「チェネレントラ」序曲の、間合いの見事さと自然な呼吸に思わず唸った。とにかくひとつひとつの音が素晴らしく息づく。生命力の宝庫とでも表現しようか。
シューベルトのニ長調交響曲が良かった。第1楽章序奏アダージョ・マエストーソの爆発力にまずは感銘。主部アレグロ・コン・ブリオに入ってからのシューベルトならでは歌う旋律美に指揮者の表現力の豊かさを感じた。
第2楽章アレグレット中間部の木管の得も言われぬ趣きある音色に感謝。主部の、主題を奏する弦楽器群の柔和な弱音の粋。そして、第3楽章メヌエットはまさに踊る指揮者の真骨頂。トリオの愉悦に乾杯。終楽章プレスト・ヴィヴァーチェの昂揚と興奮に作曲家の天才を思う。
新日本フィルハーモニー交響楽団
サントリーホール・シリーズ
第535回定期演奏会
2015年2月20日(金)19時15分開演
松居直美(オルガン)
コンサートマスター(豊嶋泰嗣)
ジャン=クリストフ・スピノジ指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
・ロッシーニ:歌劇「チェネレントラ」序曲
・シューベルト:交響曲第3番ニ長調D200
休憩
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調「オルガン付」作品78
サン=サーンスの「オルガン付」は聴衆の昂奮と感動を呼ぶ稀代の名曲だ。しかし、特に第1楽章前半の、どうにも音楽がひとつにまとまらず、ちぐはぐな印象を与えたことが残念。しかし、後半冒頭のオルガンの静謐な低音の調べに心動かされたのは予想通り。
第2楽章前半では、ようやくまとまりを見せはじめ、音楽がクライマックスに向かい進んでゆく。それにしても後半の堂々たるコラール主題に感動、そのままコーダの絶頂に届かんとするエネルギーに卒倒するも、時に楽器のうるささが鼻についたのも確か。
おそらく「オルガン付」は表現が難しいのだろうと思う。
とはいえ、スピノジは将来性有望。オルガニストを丁寧にエスコートする愛嬌ありながらも紳士然とする態度に敬服。願わくばアンコールが欲しかった。
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[…] の音楽によって美しく音化される。それにしてもスピノジの音楽作りの巧みさ。2年ほど前に実演を聴いたとき、その才能に目を瞠ったけれど、確かに彼のヴィヴァルディを聴くと、内在 […]