Jim Morrison Music by The Doors “An American Prayer”を聴いて思ふ

jim_morrison_an_american_prayer193祈りが「意乗り」だとするならば、自らが生み出すイメージがいかに重要であるか。
すべてを言葉にするのは不可能。いや、本当に大事なことは言語化不可能。要は感じるしかないのである。

現実の境界線を見きわめようとしていたのかもしれない。何が起こるか、興味津々だった。そう、ただそれだけ。すべては好奇心に過ぎなかった。
(1969年 ロサンジェルス ジム・モリスン)
ジェリー・ホプキンス、ダニエル・シュガーマン著/野間けい子訳「ジム・モリスン―知覚の扉の彼方へ」(シンコー・ミュージック)

裏返すと、ジムには現実と幻想の狭間でいつも浮遊していたということ。もっと言うなら、彼にとって現世というのは完璧に幻想の中にあったということだ。それを現実逃避といってしまうと元も子もない。ジム・モリスンは知っていた。

モリスン没後に新たにリリースされたアルバム。
彼が残した朗読テープをもとに残ったドアーズのメンバーがオーヴァーダビングし、完成させた代物。
ジム・モリスンの妖艶な声にただひたすら耳を傾ける。
アルバムのタイトルそのまま、ここに在るのはジムの祈りのみ。
実に哀しく、切ない。

Jim Morrison Music by The Doors:An American Prayer

Personnel
Jim Morrison (vocals and spoken words)
Robby Krieger (guitar)
Ray Manzarek (keyboards)
John Densmore (drums)

絶頂を極めた後、わずかな期間のうちに無残に滑り落ちるジム・モリスンのことをレイ・マンザレクは次のように言った。それは1970年12月12日土曜日の、ニューオリンズでの公演中のこと。

あそこにいたものはみんな、見たはずだぜ。ジムは、ショーの半ばで、すべてのエネルギーを失ってしまったんだ。マイクに寄りかかって、ただすべり落ちるだけ。ジムの魂が脱け出ていくのを、みんな目撃してる。ジムは、精根尽き果てたんだ。
~同上書P274

「アン・アメリカン・プレーヤー」でのジムの声は生気に溢れる。この朗読の多くは、1970年12月8日、彼の27歳の誕生日にロサンジェルスのスタジオで何時間もかけてレコーディングされたものだ。
まさに魂の抜け殻となる直前のジム・モリスンの創造物は何ものにも代え難い魅力を放つ。
ただただ感じるのみ。

 

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2 COMMENTS

“スケルツォ倶楽部”発起人

ご無沙汰しております、“スケルツォ倶楽部”発起人です。
私は 高校生の頃、リアルタイムで このレコードと出会いました。ちょうど フランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録 」をきっかけに 全米規模でドアーズ・リヴァイヴァルが起きていた時期で、ジム・モリソンが遺した朗読のテープに ドアーズの仲間が後から音楽をつけるという斬新な試みがまだたいへんめずらしく、冒頭の「ゴースト・ソング 」というタイトルもそのまま非業の死を遂げたモリソンが タイムリーに甦ったような錯覚を与えた上、その神秘的な詩の内容とも相まって、強く印象に残ったものでした。とても懐かしいです、ありがとうございました。

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岡本 浩和

>“スケルツォ倶楽部”発起人様
コメントありがとうございます。
オンタイムでこれを聴かれているとなると、相当な衝撃だったでしょうね。
残念ながら僕はその頃クラシック音楽一辺倒の時期で、ロック音楽とは無縁でした。
「地獄の黙示録」についても、どちらかというとショルティの「ワルキューレ騎行」に惹かれておりましたし。
ただ、大学に入っていろんなジャンルの音楽に触れるようになって、ようやくドアーズに目覚めました。
「アン・アメリカン・プレイヤー」のみならず、ドアーズのアルバムは今聴いても実に新鮮です。
何よりジム・モリスンの声が素晴らしいと思います。

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