ケンペ指揮ウィーン・フィルのウィーン愛聴曲集(1958&1960録音)を聴いて思ふ

kempe_viennese_favorites410場のエネルギーというものがある。
その地に脈々と引き継がれた気というものがある。同時代でも国や地域により生まれる芸術の質が異なるのは「地」の影響は少なからずあろう。
そしてまた創造に人から絡む以上、その人の持つエネルギーもそこに確実に刻印される。
音楽の場合、それは律動であり、鼓動であり、独特の訛りというものに現れるのだろう。

職人気質の丁寧な音楽作り。
いわば質実剛健なウィーンの音楽。
ためるところはため、勢いよく進むべきところは前のめりで。
さすがにウィーン・フィルの演奏だけあり、リズムは優雅で高尚で、旋律は美しく踊る。
「こうもり」序曲は、電光石火の如く・・・とはいかず、幾分弱めの音、堂々たる足取りで奏される。中間のオーボエの何という哀愁。
また、「皇帝円舞曲」導入部の厳かでありながら喜びに溢れる旋律に感動。温かみのあるチェロの音色。そして、ワルツ主部の開放的で雅な音楽に癒される。何と充実した響きであり構成であることか。ヨハン・シュトラウスⅡ世の力量ここにあり。

・ヨハン・シュトラウスⅠ世:ラデツキー行進曲(1958.2録音)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり」序曲(1958.2録音)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「皇帝円舞曲」作品437(1960.12録音)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:喜歌劇「千夜一夜物語」間奏曲(1960.12録音)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「ウィーンの森の物語」作品325(1960.12録音)
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:ポルカ「クラップフェンの森で」作品336(1960.12録音)
・ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「ディナミーデン」作品173(1960.12録音)
・ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」作品235(1958.2録音)
・レハール:ワルツ「金と銀」作品79(1958.2録音)
・ホイベルガー:喜歌劇「オペラ舞踏会」序曲(1958.1録音)
ルドルフ・ケンペ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

「ウィーンの森の物語」序奏での民族楽器ツィターの可憐な音色に恍惚となり、主部のワルツにおけるわずかなための巧さ、そして堰を切ったかの如くの音楽の奔流にルドルフ・ケンペの職人技を思う。
何より素敵なのは、レハールの「金と銀」。旋律の歌わせ方、間の取り方、楽器のバランス、明瞭なリズム、呼吸の深さなどどこをどう切り取っても堂々たる風格で、このレハールの有名曲が超名作として雄姿を表すのである。
残念ながら、ルドルフ・ケンペは早く逝き過ぎた。
もう少し長生きしてくれていたらより一層磨かれた神がかり的演奏を聴かせてくれたのかも。

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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2 COMMENTS

雅之

ウィーン・フィルも、現在では当時に比べ機能性が向上した換わりに濃厚な地酒の味が減っていますよね。どこの名門オケにもいえることですが、性能が良くなる一方で没個性化が進んでいています。

ところで、ウィーンという町は京都に似て、観光にはいいけれど、住むには伝統に縛られ過ぎて窮屈そう。エリーザベト・シュヴァルツコップが無人島に持って行きたい1枚に、あえてライナー&シカゴ響のウィンナ・ワルツ集
http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%83%BC_000000000020590/item_%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%84%E9%9B%86%E3%80%80%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC%EF%BC%86%E3%82%B7%E3%82%AB%E3%82%B4%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3_1415459

を選んだのは、ウィーンの小うるさい老人たちからの開放感が欲しかったからなのかも、です。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
音楽に限らずインターナショナル化というのも一長一短ですね。

>ウィーンの小うるさい老人たちからの開放感が欲しかったからなのかも、です。
なりほど!(笑)

それにしてもシュヴァルツコップが1枚にライナーのウィンナ・ワルツ集を選んだというのは意外でした。
聴いたことがないので聴いてみたいと思います。

返信する

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