すべてひとつであることがわかればもっといいのに・・・

ginastera_concerto_noguera.jpgNHK-FM放送。昔は、本当によくお世話になった。少なくともまだまだCD黎明期で、LPレコードと2本立てでアルバムが同時発売されていた80年代後半頃までは頻繁にエアチェックをし、気に入った音楽はカセットテープに保存して、繰り返し聴いたものだ。しかし、今やまず聴くことは無くなってしまった。

今朝、久しぶりにラジオのスイッチを押してみた。NHK-FM。番組名は知らない。突如、耳に飛び込んできた音楽が、懐かしいEmerson, Lake & PalmerのToccata(Brain Salad Surgery(邦題:「恐怖の頭脳改革」)所収)。嗚呼、何てかっこいい曲なんだろう・・・。ついつい手を止め、聴き入ってしまう。
そして、続いて流れたのがその原曲となったアルベルト・ヒナステラのピアノ協奏曲第1番作品28の第4楽章。原曲もさることながら、Keith Emersonの編曲センスは、彼らの「展覧会の絵」などを聴いてもわかるように他を寄せつけない圧倒的なもので、聴き方によってはEL&P版の方が良いと思う人もいるんじゃないかなどと考えながら数分傾聴する。

お昼に食事をしながらふとNHK総合テレビを観た。
「生中継 ふるさと一番!『復活!伝統の燻(いぶ)り豆腐~岐阜県郡上市~』」
チーズのような形をした燻り豆腐。冬になると雪深くなる岐阜県郡上市では、昔からの生活の知恵で、保存食として豆腐を燻し食していたのだという。今でこそ、こうやって見も知らぬ地方の「食」についての情報を得、食べたければいつでも取り寄せて食べることができるようになったのだから、進歩とは素晴らしい。自動車をはじめとした国内のメーカーなどが苦悩する大不況の中、日本マクドナルドは収益過去最高更新というニュースを聞き、そういう進歩と引き換えに、一方で人間は自身の舌を麻痺させてしまってもいるのではないか・・・。その土地特有の産物を旬の時期にその土地にて食すことが実はもっとも贅沢。古の人々の知恵とはよくいったものだ。
文明の発展と比例して人間はどんどん欲深くなる。便利になり、知らなくても良かったもの、ことを知ってしまったゆえ、何でも自分のものにしたくなる。

オーストラリアの山火事は同国史上最悪の被害らしい。19世紀前半にイギリスによって植民地化されたこの地では、当時アボリジニなど先住民が大量に虐殺された。南米カリブ海に浮かぶ島々においてもかつて大航海時代にヨーロッパ人が上陸し、先住民を絶滅させた。人類の歴史とは「戦争」であり、「領地争い」と言い切って間違いないと思うが、それにしても「自分だけが良ければ良い」という人間の欲とは醜い。

ヒナステラ:ピアノ協奏曲第1番作品28
マルタ・ノグエラ(ピアノ)
ヴォルフガング・グレース指揮ヨーロッパ・シンフォニー

20年前、まだ僕がNHKプロモーションに勤務していた頃「中南米フェスティバル」という外務省主催のイベントに関わった。詳細はもうとっくに忘却の彼方だが、その中で、中南米の現代音楽作曲家の作品を集めたコンサートがNHKホールで開催された。クラシック音楽好きとはいえ知っていたのはせいぜいヴィラ・ロボスくらいで、当時の僕にとっては初めて名を聞く作曲家ばかりだった。そこにはアルベルト・ヒナステラの名前もあった。演奏されたのはバレエ音楽「エスタンシア」作品8。数年前まで手元にあった実況録音カセットテープも今はない。どんな曲だったか全く思い出せないのが残念だ。

ヒナステラのピアノ協奏曲はバルトークのそれやプロコフィエフの同曲に優るとも劣らない。ヨーロッパの伝統と南米大陸先住民族の土俗的エネルギーが交錯する。Keith Emerson編のToccataも抜群だが、やっぱり原曲の勝ち!!

※本日は満月。固執を捨て、意識を外に・・・。


4 COMMENTS

雅之

こんばんは。
私がヒナステラのピアノ協奏曲第1番を知ったのは、つい1年ほど前のことです。「このNAXOSを聴け!」(松本大輔 著  青弓社)を読んだら、
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%93%E3%81%AENAXOS%E3%82%92%E8%81%B4%E3%81%91-%E6%9D%BE%E6%9C%AC-%E5%A4%A7%E8%BC%94/dp/4787272357/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1234186775&sr=1-1
「ピアノ史上最も破壊的な終楽章」、「南米のストラヴィンスキーかバルトークか。アルゼンチンの破壊王ヒナステラの効果抜群のピアノ・コンチェルト」とか書いてあり、すぐ聴きたくなり、NAXOS盤のドラ・デ・マリニス(P)、フリオ・マラヴァル指揮、スロヴァキア放送響のCDを入手しました。「2番」の方も聴きましたが、この本に書いてあるとおり、より強烈でした。どちらもエキサイティングな曲ですね。傑作だと思います。
「このNAXOSを聴け!」は危険な本です。聴きたい作曲家、CDの幅が際限なく拡がって収拾がつかなくなります。この本に影響されて、それまで名前を聞いたこともなかった作曲家のCDを、いっぱい買ってしまいました。
岡本さんも、あまりこういうマニアックな曲を、これ以上すすめてそそのかさないでください!(笑)
でも、クラシック音楽の初心者の方には、案外シューマンより受けるかも(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。この「このNAXOSを聴け!」は未読です。しかし、面白そうですねぇ。読んでみたいです。
>この本に影響されて、それまで名前を聞いたこともなかった作曲家のCDを、いっぱい買ってしまいました。
それは確かに危険ですね(笑)。
ところで、今回紹介したArte Nova盤にはピアノ・ソナタ第1番も収録されています。これがまたかっこよくて良い曲です。
>でも、クラシック音楽の初心者の方には、案外シューマンより受けるかも(笑)。
どうですかねぇ・・・(笑)。面白いのは、講座の後、皆さん熱心にシューマンの復習をされているようで、「だんだん」好きになってきたという人も多いです。ウルトラセブンの最終回に使われたという話を聴くと、より親しみやすくなるようで。

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yutakarlson

■まだまだ現役! カセットテープデザインのあんな物こんな物-音の進化は速い?
こんにちは。はじめてコメントさせていただきます。カセットテープなつかしいですね。それに、EM&Pも。今は、カセットのデザインでいろいろな小物もでています。現在私自身は、ミニノートに音楽を入れて聞いています。スピーカーはBoseのアクティブ・スピーカーを使っています。こういう組合せもいいですよ!!しかし、音の世界は、SP、LP、カセット、CD、 MD、MP3など、移り変わりが激しいです。私は年齢的にも、また、環境的にもこれらの移り変わりを身をもって体験することができました。私のブログでは、この移り変わりの個人史のようなものを掲載してみました。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

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岡本 浩和

>yutakarlson様
こんばんは。コメントありがとうございます。
早速ブログを拝見させていただきました。Jazzにお詳しいようですね。これからちょくちょく訪問させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。

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