サマーフェスティバル2016テーマ作曲家〈カイヤ・サーリアホ〉(管弦楽)

summer_festival_2016629カイヤ・サーリアホの音楽は自然体だ。
それこそ余計なものを排除していったジャン・シベリウスの衣鉢を継ぐ。

黄昏時に久しぶりに虹を見た。とてもきれいだった。
世界には混沌があり、そして調和があるのだと思った。自然の美しさに反応できる心が嬉しい。また、人間の想像力、創造力の片鱗を享受できる機会のあることに感謝したい。
日進月歩。

シベリウスの交響曲第7番は傑作だ。不純物の一切ない孤高の音楽。
左利きの指揮者マルティネス=イスキエルドは、同じく左利きの指揮者パーヴォ・ベルグルンドを髣髴とさせた。冒頭から思いのこもった何と温かい音楽。終始抑制されていながら音はうねり、時に重厚な雄叫びを上げるものの(トロンボーン!!)決して濁りはしない。終わった後にまた最初から聴きたくなる作品は稀。感動した。

サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.39(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家〈カイヤ・サーリアホ〉
管弦楽
2016年8月30日(火)19時開演
サントリーホール
グザヴィエ・ドゥ・メストレ(ハープ)
エルネスト・マルティネス=イスキエルド指揮東京交響楽団
・ジャン・シベリウス:交響曲第7番ハ長調作品105(1924)
・カイヤ・サーリアホ:トランス(変わりゆく)(2016)(サントリーホール、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、hr交響楽団共同委嘱、世界初演)
―第1楽章「束の間の」
―第2楽章「空しさ」
―第3楽章「使者」
休憩
・ゾーシャ・ディ・カストリ:系譜(2013)(日本初演)
・カイヤ・サーリアホ:オリオン(2002)
―第1楽章「メメント・モリ(死ヲ憶ヘ)
―第2楽章「冬の空」
―第3楽章「狩人」

夢見心地のサーリアホ。睡魔に襲われたわけではないのだけれど、時間を失ったかのような錯覚を覚えた(全編にわたって弦の弾ける恍惚の表情が時間を逆行させる)。
世界初演の「トランス」は、ドゥ・メストレの癒しのハープが実に美しかった。あの大きな身体から紡ぎ出される繊細な音楽は、室内楽的な、決して爆音を上げない管弦楽の伴奏と相まって何とも中性的で素晴らしかった。特に終楽章「使者」におけるハープと管弦楽の均整のとれた対話に覚醒。
休憩を挟み、後半の「オリオン」も壮絶な音楽。例えば、終楽章「狩人」の、「春の祭典」を髣髴とさせるリズムの饗宴に心奪われた。

どこかで聴いたことがあるということがない分、見事に創造的。どこをどう切り取っても斬新なのだからサーリアホの才能はすごい。難解なイディオムを使いながらも決して難しく感じさせない全脳的音楽とでも表現しようか。
終演後、舞台に上がったサーリアホとマルティネス=イスキエルドの抱擁を見て、そして聴衆から大きな拍手喝采を得る彼女の謙虚でありながら自信に漲る表情を見て、この場に居合わせることができた奇蹟に感謝した。音楽とはまさに一期一会。

ちなみに、日本初演となるディ・カストリの「系譜」もとても良い曲。なるほど、作曲者の言う「管楽器による微分音のかすかなコラール」の温かさ。

 

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