クレンペラー指揮フィルハーモニア管のヘンデル「メサイア」(1964録音)を聴いて思ふ

klemperer_sacred_music691煌々と照るほぼ満月が美しい。
澄んだ空気と凍てつく空気こそ日本の師走の風景。もうすぐクリスマスだ。

私は過去と現在と未来の中に生きよう。三人の幽霊方に私の心の中ではげましていただくのだ。おお、ジェイコブ・マーレイよ!このことのために神もクリスマスの季節も讃えられんことを。私はひざまずいて言ってるんだ、ジェイコブ爺さんよ、ひざまずいて言ってるんだ!
ディケンズ/村岡花子訳「クリスマス・カロル」(新潮文庫)P137

そもそも魂は永遠なのだ。

ヘンデルの傑作オラトリオ「メサイア」。
例えば、巨大かつ崇高な、イエスの生誕を祝う第1部第12曲「ひとりのみどりごがわれわれのために生まれた」だけをとってみても、この演奏の価値は永遠だ。
合唱に通底する歓喜、そして管弦楽による強靭な生命力の表現。オットー・クレンペラーは実に偉大なり。
続く「田園曲」ラルゲット・エ・メッツォ・ピアノの静かで長閑な調べに恍惚となる。
そして、アコンパニャート「するとたちまち、おびただしい天の軍勢が」におけるエリーザベト・シュヴァルツコップの深みのある(それでいて多少癖のある)ソプラノの、魂にまで沁み渡る飛翔。

・ヘンデル:オラトリオ「メサイア」HWV56
エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
グレース・ホフマン(コントラルト)
ニコライ・ゲッダ(テノール)
ジェローム・ハインズ(バス)
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団&合唱団(1964.2-9録音)

全編がまるで魔法。
濃厚な、いかにも浪漫的な味付けなのに、それがかえってバロック音楽のもつシンプルさと清澄さを一層強調するよう。これほど重厚なテンポをとりながら決してもたれないのには何か秘密があろう。
何よりクレンペラーの信仰心、それも他でもない音楽の神々への篤い思いがなせる技なのかも。

全能なる我らの神である主が王となった!
王の中の王!主の中の主!

特に、聴き慣れた第2部最後の合唱曲「ハレルヤ!」が、これほど華麗に、その上、敬虔な心情をもって響く様!
あまりに人間的で・・・、長く聴き継がれるべき名演奏。

・・憧れを抱いて群れ集った聴衆に「メサイア」が与えたこの上ない喜びは言葉では言い尽くせない。高貴で威厳に満ちた感動的な歌詞に付けられた音楽の崇高さと気品と優しさは、ともに相携えて恍惚とした心と耳をとらえ、魅了した・・・
(1742年4月17日付「ダブリン・ジャーナル」)
三澤寿喜著「作曲家◎人と作品シリーズ ヘンデル」(音楽之友社)P143

初演の場にいた聴衆との同期の如し。

 

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3 COMMENTS

雅之

>そもそも魂は永遠なのだ。

同感です。私の場合、「我が巨人軍は永久に不滅です!」と同程度の意味ですが。

2月7日に ビートルズが初訪米。このころのEMIは大車輪の忙しさですね。

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ヤノヴィッツ ヴンダーリヒ プライ ボルイ ウィーン楽友協会合唱団 カラヤン指揮ウィーン・フィル ハイドン オラトリオ「天地創造」(1965.8Live) | アレグロ・コン・ブリオ

[…] 性が有する最高の発露であろうと思う。ハイドンの聖俗統一された音楽の美しさに感無量。何よりカラヤンの人間臭い表現に囚われという人間の弱さを思う。※過去記事(2016年12月15日) […]

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