UK “Night After Night UK Live!” (1979)ほかを聴いて思ふ

uk_night_after_night748万物流転。
あれから随分の時間が流れたことを悟る。
ずっとジョン・ウェットンを聴いていた。
完璧なテクニックに裏打ちされた骨太のベース・プレイに痺れ、高らかに絶叫しても濁ることのない透明な声に僕はいつも勇気づけられていた。
資質の異なるバンドを渡り歩き、そして持って生まれたのであろう多様な音楽性を駆使し、どこにおいてもなくてはならぬ存在になった彼のロック音楽界への貢献度はとても大きい。
残念だ。

久しぶりにUKを聴いた。1979年の来日公演を収録したライヴ盤。
圧巻は、”Alaska”以降の、ウェットンのベース・プレーヤーとしての底力が刻印された諸曲。天から差す煌めく光の如く、旋律を縦横に響かせるエディ・ジョブソンの色彩豊かなヴァイオリンとキーボードに対し、ウェットンとテリー・ボジオは強力で重厚なビートを頻発し、音楽を地から支える。

Time to kill
Going nowhere
Killing time
Staying where there’s…

ウェットンの、珍しく哲学的な言葉が胸に刺さる。

・UK:Night After Night UK Live! (1979)

Personnel
Eddie Jobson (keyboards, electric violin)
John Wetton (bass, lead vocals)
Terry Bozzio (drums)

asia_alpha749訃報記事のほぼすべてに「エイジアの~」という枕詞がついているのに多少の違和感を持ったのは今でこそ。遅れて来たロック・フリークの僕がジョン・ウェットンに出逢ったのはまさにエイジア。おそらく賛否両論激しいであろう1983年の”Alpha”は、僕にとっては想い出の音盤。どの曲も拡散する、あまりに大袈裟なオーケストレーションに(産業ロックと揶揄されようと)僕は大いに惹かれたし、今でもそれは変わらない(もはや滅多に耳にすることはないけれど)。

・Asia:Alpha (1983)

Personnel
Geoff Downes (keyboards)
Steve Howe (guitars)
Carl Palmer (drums)
John Wetton (vocals and bass guitars)

第1曲”Don’t Cry”から懐かしさでいっぱい。音楽は時間と空間を超え、その当時の記憶をまざまざと蘇らせる。ただし、悲しいかな、歌詞はどの曲もいわゆる恋愛、失恋などをモチーフにした俗っぽいもの。そのことが逆にポピュラリティを獲得する要因になったのならそれはそれで良しなのだけれど。ちなみに、”My Own Time (I’ll Do What I Want)”や”The Last To Know”の大仰で美しい音楽は、ジェフリー・ダウンズが主体になったものなのか、あるいはジョン・ウェットンが主体なのか、それはわからないけれど涙もの。

I was the fool who trusted you
No evil thoughts in my mind
When I see you standing there with him
Who can I blame for this deception?

しかしながら、ウェットンのキャリアの極めつけは何と言ってもキング・クリムゾン。流れであの頃耳にしたクリムゾンの「太陽と戦慄」に19歳の僕は震撼した。ここでのウェットンのプレイは新鮮で革新的で、フリップやクロスの編み出す旋律に対し、ブルーフォードと共に拮抗したリズムを編み出す。何という奇蹟!

・King Crimson:Larks’ Tongues in Aspic (40th Anniversary Edition)(1973)

Personnel
David Cross (violin, viola, mellotron)
Robert Fripp (guitar, mellotron &devices)
John Wetton (bass, vocals &piano)
Bill Bruford (drums)
Jamie Muir (percussion &allsorts)

crimson_larks_tongues_40th747何より40周年記念盤に収録されたボーナス・トラックの”Part 1 (Alt mix)”、”Book of Saturday (Alt take)”、”The Talking Drum (Alt take)”の、化粧を施される前の赤裸々で直接的な響きに感動。中でも素晴らしいのは”The Talking Drum (Alt take)”。一切のSEを排除し、バンドの5人がひとつに収斂されゆく呪術的熱狂に金縛りに遭う如し。

You make my life and times
A book of bluesy Saturdays
And I have to choose…

”Book of Saturday”での不可思議なパーマー=ジェイムスの詩に付けられた音楽は終始静けさを維持する。ウェットンの声がまた虚ろ。
最後に”Exiles”を聴いて締めよう。

Now…in this faraway land
Strange…that the palms of my hands
Should be damp with expectancy

こうやって振り返ってみると、それぞれの時代に必要な役割を果たしたジョン・ウェットンは、この世の聖も俗も、いわゆる清濁併せ飲んであの世に旅立ったのだということがわかる。その字の通り「遥か遠い国」に逝ってしまった彼の人に。
合掌。

 

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3 COMMENTS

雅之

遠い学生時代(私の愚息くらいの歳)、ご多分に漏れず、AsiaもAjaも好きでした、(Gauchoも・・・笑)。

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