プロジェティスタ

verdi_quartet_amadeus.jpgGCDF-Japanキャリアカウンセラーの資格を維持するために、3年間で45時間以上の継続学習が課されている。取得後1年半余りが経過するが、お陰さまで順調にノルマはこなせている。昨日は、明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授である野田稔先生の講演を聴いた。題して「『ミドルの危機』を超えて-ミドルマネジメント活性化の処方箋-」。あくまで資格維持が目的なので、こういう講演にはほとんど期待せず出掛けるのだが、思った以上の収穫があり、良かった。

ざっくりまとめてみると以下の通り。
まずは今の組織の構造的な問題。僕もマネージャー研修などを請負っている関係上、直面することが多々あるのだが、要は、マネージャーの教育をいくら施しても、そもそもの「構造」を変革しない限り抜本的な解決には至らないということである。現在の組織の大半はどういう構造的問題があるのか?
ことは20年前のバブル期に遡る。当時は1社が何百人という新卒を採用した時代。一人のマネージャーに何人もの部下がつき、マネジメントというものを実地で学べた良き時代である。しかし、1989年末、日経平均株価が最高値をつけて以降、年が明け、株価はみるみる下がり始める。いわゆる「バブル崩壊」である。その後2、3年、企業は採用活動をそれまで並みに維持したものの、さすがに1993~94年ごろから翳りを見せ始める。「就職超氷河期」の始まりである。1社が採用する人数は10分の1にまで縮小されることになるわけだから、社内の部署では後輩がいつまでも入ってこないという事態になる。結果的に、数人のマネージャーに対し、新卒1人という組織の逆転現象が起こる。万年一番年次が若く、マネジメント経験なく、職階だけが上がるという矛盾が起こり始めるのだ。そして、後輩の指導などしたことない人にいきなりマネジメントをしろという命令が下ることになる。さぁ、当人は大変だ・・・。それがまさに今の時代、マネージャー層が抱えている問題に直結する。特に、組織がフラット化し、プレイング・マネージャー的な役割を課された人たちは大変な思いをする。自分の結果も出さなくてはならない。部下のマネジメントまでも託され、グループ全体の成果もあげなくてはならない。

そういう状況の中、野田先生が提言されていたのは、自立的な「プロジェティスタ」をいかに育てるかということであった(プロジェティスタとは「イタリアのいわゆる熟練技術者」ということだが、彼らは「企画開発から生産、販売、マーケティングに至る、ビジネスプロセスのすべてに関与する」超多能工なのだという)。社内で自由にプロジェクトを提案し、人を集めてこれを遂行したり、チームをリーダーとして率いたりできる人材をいかに育てるかが重要なのだと。では、具体的にどういう風に育てるのかまでお話いただけたが、残念ながらその辺りは省かせていただく(僕的にはこの方法こそがとても参考になった。要は秘密ということです・・・笑)。

イタリアの熟練技術者か・・・やはり、重要なのは「能動性」であり、「ピンで生きる」という「自立性」なんだな。

ヴェルディ:弦楽四重奏曲ホ短調
アマデウス四重奏団

およそヴェルディらしからぬ純粋な器楽曲だが、実にこれが良い。「アイーダ」により大成功を収めた作曲家が小休止の意味をこめてか、あくまで自分自身のために作曲した隠れた傑作。

イタリアという土壌はさすが「ルネサンス」を産んだだけあり、人々の自律性というか革新性に目を見張るものがある。ただし、古来極端な格差社会なのだと。ブルジョアとプロレタリアートの格差が半端でないらしい。そういう環境の中で、ハングリーな輩は自らのスキルを磨くことに命を懸ける。ヴェルディなどある意味「プロジェティスタ」の最たるものだろう。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
岡本さんは、ホリえもんや、ドラエモンや、村紙よし秋のようなビジネスマンをどう評価されますか?結局、焼肉定食の社会の中での落語者は「事故責任」なので、仕方がないということなのでしょうか?
今の世の中、何かが違う、何かがおかしいなあ、何かが狂っている、という疑問を氷解させる、「1Q84」を読むよりよほど有意義なセミナーや研修なら、私もあくまで「自己責任」で、どんどん参加してみたいものだと考えております。
ヴェルディの弦楽四重奏曲、私の愛聴盤は、過去ベートーヴェンの話題の時にもおすすめしたことのある、プレヴィン指揮ウィーン・フィル演奏の、トスカニーニによる弦楽合奏版のCDです。
http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=1882382&GOODS_SORT_CD=102

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
彼らは金融主体の資本主義の申し子ですが、ある意味被害者でもあるかなと僕は思います。
世の中のしくみそのものを変えないことにはもうどうしようもないかもしれません。
>疑問を氷解させる、「1Q84」を読むよりよほど有意義なセミナーや研修なら、私もあくまで「自己責任」で、どんどん参加してみたいものだと考えております。
リーズナブルな金額でなかなか意義深い講演会などはたまにありますね。以前は講演会など振り向きもしなかったのですが、良い先生だととても面白いです。
ご紹介いただいたCD、まだ聴いておりませんでした。これは聴いてみたいと思います。

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