ほぼ満月は霞の中。
いまだ寒空のもと、大自然と戯れる。
人と人とが深く交わるときに起こる幸福感との共鳴。これぞハーモニー。
ハ短調交響曲ほど、一切の無駄が省かれ、これ以上ないという形に切り詰められた名作はない。何も引かず、何も足さず、どんな指揮者のどんな解釈も飲み込む懐の深さ。
楷書のベートーヴェン。
アンタル・ドラティがロイヤル・フィルを振って録音したそれは堅牢な造形を持ち、踏み外しのない正当な解釈で聴く者に喜びを与える。
よく言えば、とても全体観に富んだ解釈。しかし、悪く言えば、大人しい凡演。
第1楽章アレグロ・コン・ブリオに漲る熱は、指揮者の内に眠るベートーヴェンへの愛情の証し。しかし、終楽章アレグロは、何だか拍子抜けしたように詰めの甘い、腑抜けのような様相を示す。大らかと言えばそうなのだが、大味過ぎて少なくとも僕は楽しめない。
ベートーヴェン:
・交響曲第5番ハ短調作品67(1975.3.15-16録音)
・交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」(1976.3.3-4録音)
アンタル・ドラティ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
「田園」交響曲も極めてオーソドックス。
第1楽章「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」は早めのテンポで歌い、心底の喜びを表現する(提示部の反復はなくもがな)。展開部での心のこもる音楽は、ロイヤル・フィルの澄んだ音とあわせ、僕たちを魅了する。
また、第2楽章「小川のほとりの情景」は、ドラティの真骨頂。まさに大自然とひとつになり、ベートーヴェンの心象を見事に表現する技。何より弦楽の美しさ。展開部での木管群の愛らしさ。コーダの小鳥の鳴き声の模倣も自然体で素晴らしい。
そして、幾分テンポを緩めた第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」を経て、第4楽章「雷雨、嵐」での、自然の脅威の堂々たる描写。地鳴りのようなティンパニに、弦楽器が虚ろに対応し、やがて嵐が静まる頃、音楽は祈りとともに天上へと昇華される。
さらには、終楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」の第1ヴァイオリンによる第1主題の陶酔的響き。しかし、クライマックスに向けて失速する様子が実に残念。やっぱりどこか「腑抜け」になるのである。ただし、コーダのリラックスした静けさは心底美しい。
闘争と平和が一対であることをベートーヴェンは教えてくれる。
戦いは、残念ながら決して止むことない。
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>戦いは、残念ながら決して止むことない。
岡本様もよくご存じのように、たとえば、もう何十年もの間、ゴジラと人類との深刻な闘いが繰り返されてますよね。
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そんなことに多額の予算をかけるのも、考えものだと思います。
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>雅之様
すごいですね、このロボット。
>そんなことに多額の予算をかけるのも、考えものだと思います。
同感です。