Mariya Takeuchi “Bon Appétit!” (2001)を聴いて思ふ

音楽を音楽としてやっていくにはどうしたらいいんでしょうか、とずっと相談していた相手が事務所の先輩である山下達郎だったらしい。しかも、お互い第一印象は良くなかったそうで、しかし、話をしているうちに少なくとも彼女は「この人が言っていることはいちいちすごく一理ある」と思ったようで(第一印象が悪いということは、裏返せばそれだけ気になっているということで)、人生とはどこでどのように変わるのかわからないものだとつくづく思った。それこそ縁なのである。

そして、彼女が達郎に対し、良き相談相手から恋愛にスイッチしたきっかけは、アン・ルイスに提供した「リンダ」のレコーディングの時、忙しい最中徹夜で一人多重コーラスを真面目に取り組んでくれたことから、まりやは「この人は誠意がある人だな」と感激したところからみたい。

元々山下達郎のファンであったという竹内まりやの、達郎に対する尊敬の念はずっと変わらず、彼の音楽活動をずっと支え続けたいという真摯な想いこそがすべてで、夫婦円満の秘訣はどうやら「お互いを尊敬し合うこと」なんだと考えさせられた。

竹内まりやの生み出す、実体験なのかどうなのかわからない、複雑な人間模様を呈す、それでも、確かにそういう駆け引きはありそうだという歌詞と、(特にバラードにおける)何とも心に迫る旋律の美しさ、その上に、夫である山下達郎の完全無欠のアレンジが輪をかけて楽曲を完璧なものにしているのだとあらためて知った。
例えば、1998年の「カモフラージュ」は僕にとって最愛の作品のひとつ。
イントロや間奏での達郎の一人多重コーラスは短いながら何とも癒しに満ち、まりやの声と見事に融け合う様に言葉に表し難い幸福感を抱く。

〇〇〇〇〇〇明日終わり迎えても 〇〇〇〇〇〇怖くない
昨日までの〇〇〇〇〇〇てて 新しい私になる
あ〇〇〇〇〇〇この絆こそ 隠せ〇〇〇〇〇〇形なの
「カモフラージュ」

本心からつながったときに起こる奇蹟こそ真の愛なのである。

・Mariya Takeuchi:Bon Appétit! (2001)

また、「真夜中のナイチンゲール」の、包容力ある女性性を前面に歌う健気な詩に男はおそらくメロメロになる。

My love, 〇〇〇〇〇〇 my love, 〇〇〇〇〇〇い
でも〇〇〇〇〇〇う一度 めぐり〇〇〇〇〇〇わして
この〇〇〇〇〇〇のために すべてを〇〇〇〇〇〇いとわないの
「真夜中のナイチンゲール」

夫婦に限らず、人間関係の円満の秘訣は、ひとつは、完全に役割分担し、互いに干渉し合わず、やるべきことをやること。そして、もうひとつは、逆に役割を明確に決めずとも、互いが自律し、助け合いやっていくこと。
達郎&まりや夫妻はたぶん後者のあり方なんだと思う。竹内まりやがレコーディングをしたり、ツアーに出る時、達郎は彼女のために全身全霊で尽くす。一方、達郎が音楽に多忙の時、まりやは実に献身的に支えてきた。
2014年末の武道館での、まりやの33年ぶりのコンサートのことを思った。
本当に素敵なひとときだった。あの時も達郎はバックに徹し、まりやを一途にサポートしていたっけ。
デュエットの「プラスティックラブ」と「Let It Be Me」は素晴らしかった。

偶然と〇〇〇〇〇〇事は 何もなくて
〇〇〇〇〇〇も 最初に決まってる
〇〇〇〇〇〇と 戯れを 引きかえに
永遠の恋だって 〇〇〇〇〇〇ことも・・・
人はなぜ皆 〇〇〇〇〇〇生きるの
たった〇〇〇〇〇〇も 迷路の始まり
〇〇〇〇〇〇所 いつも探してる
「天使のため息」

人生は修業なり。

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2 COMMENTS

雅之

予てから不思議だなあと感じていることがありまして・・・、書いていいのかなあ? いや、あえて誤解覚悟で書いちゃいます(笑)。

山下達郎&竹内まりや夫妻、松任谷由実&正隆 夫妻、桑田佳祐&原由子 夫妻、それに中島みゆきを含め、この人たちには、傑作を生みだす引き換えに悪魔に魂を売るとでもいえる、偉大なアーティスト特有の宿命的なスキャンダル、醜聞、ゴシップの類いがほとんど聞こえてこないですよね。

よほどの聖人君子なのか、事務所がしっかりと情報統制してるのか、あまりにも影響力を持つビッグアーティストたちなので、マスコミが勝手に業界や広告代理店に対して忖度しているのか・・・、それにしても優等生的な私生活の裏側に絶対に潜んでいるであろうダークダイドな一面が垣間見えず、私には芸術家の人物像としては、ちょっと不自然に感じてしまいます。

桑田佳祐なんてキャラクター的にも、「今までなんにも悪いことやってないわけねえだろう」と、つい疑ってしまいますが(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様

暗黙の了解ってあるんでしょうね。

達郎&まりや夫妻には何となくそういうことはなさそうに感じるのですが、桑田夫妻についてはおっしゃるように(特に若い頃)いろいろとありそうですしね。(笑)
でないと、あんな音楽は書けません。
とはいえ、そう考えると、まりやの詞もどう考えても経験がないと書けそうもないものばかりですから確かに不思議です。

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