タリス・スコラーズ 2017年6月日本公演

圧倒的な10声の饗宴。
良い音楽に触れると本当に幸せな気持ちになる。
タリス・スコラーズの、言葉では表現し難い、人の声とは思えぬハーモニーの癒し。
魂を力強く射抜く瞬間、あるいは甘い囁きのように心に染み入る瞬間多々。
ルネサンス時代の音楽に包まれる時間の崇高さ、また安心感。
仮に敬虔な宗教心がなくともその類い稀なる重唱を聴いて、感動しない人がいるのだろうか?それくらいにすべてを忘れ、舞台で奏でられる人が発しているとは思えぬ音楽に、またしてもやられた気分。
おそらく一昨日の公演より聴衆の数はわずかに少ない。本当にもったいない。誰もがとても満足のいく2時間だっただろうから。

第1部冒頭、ヘンリクス・イザークの「天の女王、喜びませ」での可憐な歌に惚れ惚れ。
また、今夜の白眉であろうジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナの「教皇マルチェルスのミサ曲」、「グローリア」での最後のアーメンの美しさ、そして、「クレド」の神々しさ、いずれもがこのアンサンブルの真骨頂。しかし、何といってもそれまでの8声が、「アニュス・デイ」の最後に至って10声になる「その時」の恍惚感。堪らない。

タリス・スコラーズ 2017年6月日本公演
教皇マルチェルスのミサ曲/《哀歌》新作《モンテヴェルディ生誕450年記念》
2017年6月7日(水)19時開演
東京オペラシティ・コンサートホール
・イザーク:天の女王、喜びませ
・パレストリーナ:教皇マルチェルスのミサ曲
休憩
・キャンプキン:ミゼレーレ・メイ
・マーリー:哀歌
・タリス:エレミアの哀歌Ⅰ
・ロッティ:十字架につけられ
・モンテヴェルディ:十字架につけられ
・モンテヴェルディ:キリストよ、われら御身をあがめ
・モンテヴェルディ:主よ、御身の怒りにて
・モンテヴェルディ:主に向かいて新しき歌を歌え
~アンコール
・トレンテス:ヌンク・ドミッテス(今こそ主よ、僕を去らせたまわん)
・イザーク:インスブルックよ、さようなら
ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ
エイミー・ハワース(ソプラノ)
エミリー・アトキンソン(ソプラノ)
シャーロット・アシュリー(ソプラノ)
エロイズ・アーヴィング(ソプラノ)
キャロライン・トレヴァー(アルト)
エドワード・マクマラン(アルト)
サイモン・ウォール(テノール)
ガイ・カッティング(テノール)
ティム・スコット・ホワイトリー(バス)
ロバート・マクドナルド(バス)

休憩後の第2部、最初のアレクサンダー・キャンプキンの「ミゼレーレ・メイ」はタリス・スコラーズの委嘱によるものだそうだが、ステージ後ろ、2階のオルガン前に2人のソプラノと1人のアルトを配置しての(またもや)立体的音響に感動するも、何よりソプラノのエイミー・ハワースによる「リベラ・メ」の絶唱に度肝を抜かれた。素晴らしい!

神よ、わが救いの神よ、
流血の罪よりわれをときはなちたまえ、
さればわが舌、御身の正義を歌わん。
(訳:今谷和徳)

そして、トマス・タリスの「エレミアの哀歌」における、その詩の内容に反して感じられた自然体の愉悦。もはや人の声を感じさせない連綿と紡がれる音に涙が出そうになった。
続いて、アントニオ・ロッティを挟み、クラウディオ・モンテヴェルディを4曲。ソプラノ4名と、バス1名を退けての5声による「十字架につけられ」の重厚な悲しみの情、一昨日のアンコールでも歌われた「主に向かいて新しき歌を歌え」の清澄な声と、完璧なハーモニー。

アンコールは例によって2曲。今年没後500年というヘンリクス・イザークの「インスブルックよ、さようなら」が殊に素晴らしかった。

 

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