アルゲリッチのショパン3つのマズルカ作品59(1967.10.31録音)ほかを聴いて思ふ

ショパンが肉親に会いたがっていることはだれの目にも明らかだった。六月になって大量に喀血して、ショパンは姉にどうしても再会したいという思いを強くして手紙を書いた。姉に会うことだけが唯一の自分の救いだが、姉の旅費を自分はどうすることもできないととある。七月になっても姉からは返事はない。グジマワへの手紙にピアノをあまり弾かないこと、作曲はまったくできないとある。
小坂裕子著「作曲家◎人と作品シリーズ ショパン」(音楽之友社)P166

実際、死期を悟った人間の最後の願いは、肉親に会うことなのかもしれぬ。人は故郷を思うのである。当時のショパンの周囲では友人や知人が次々に亡くなった。人と人とがつながっているとするなら、身近な人々の死は彼に多大な精神的苦痛を与えただろう。

カルクブレンナーが死にました(コレラで)。ドラロシュの長男がヴェルサイユで亡くなりました。フランショームのとこのあのいい召使いが死んだ。ドルレアン館では死んだものはいないが、エティエンヌ夫人の小さな子供は危篤だ。スコットランドの淑女たちがいま来ました。いろんな話がありましたが、ド・ノアーユ公爵は元気だとのことだ。それに対し、チャールス・アルバート王がリスボンで逝去されたというのがわたしの返事だった。
(1849年6月18日付ショパンよりグジマワ宛)
アーサー・ヘドレイ著/小松雄一郎訳「ショパンの手紙」(白水社)P486-487

ショパンが亡くなった後、友人のグジマワは彼の夭逝を「ジョルジュ・サンドの責任だ」とするが、果たしてそれはどうか?ショパン本人にとってはサンドと一緒にいることでインスピレーションの触発があっただろうし、何より彼女との熱烈な恋が創造活動に絶対的影響をもたらしたことは間違いないゆえ。

最近になって新たに発掘されたマルタ・アルゲリッチのショパン集を聴いた。
超絶技巧を伴い、見事な音楽性に彩られながら、暗い哀しみに溢れるショパン。それはあまりに美しい。

ショパン:
・バラード第1番ト短調作品23(1959.1.26録音)
・練習曲嬰ハ短調作品10-4(1967.12.3録音)
・マズルカ第29番嬰ハ短調作品41-4(1967.12.3録音)
・マズルカ第27番ホ短調作品41-1(1967.12.3録音)
・マズルカ第15番ハ長調作品24-2(1967.12.3録音)
・マズルカ第40番ヘ短調作品63-2(1967.12.3録音)
・マズルカ第23番ニ長調作品33-2(1967.12.3録音)
・ノクターン第4番ヘ長調作品15-1(1967.12.3録音)
・ノクターン第16番変ホ長調作品55-2(1967.12.3録音)
・マズルカ第36番イ短調作品59-1(1967.10.31録音)
・マズルカ第37番変イ長調作品59-2(1967.10.31録音)
・マズルカ第38番嬰へ短調作品59-3(1967.10.31録音)
・ピアノ・ソナタ第3番ロ短調作品58(1967.3.15録音)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

マズルカ諸曲が絶品。嬰ハ短調作品41-4の激情。ホ短調作品41-1の内省。ニ長調作品33-2の軽快な演奏の中に見る抑えがたきもの。ピアニスト自身も祖国を思うのかどうなのか、愁いと懐かしさを帯びる音調はアルゲリッチの真骨頂。特に、疾風の如く過ぎ去る「3つのマズルカ作品59」は、あっけない分心底悲しい。また、バラードト短調も、指が動きすぎて止まらないと言わんばかりの超絶技巧。しかし、その中間の静かなパートは微睡むような雰囲気を醸し、僕たちを魅了する。

僕はやっぱりショパンの音楽が好きだ。

 

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2 COMMENTS

雅之

楽譜作成ソフトの様々な活用を真剣に検討しています。

写経なら手書きでないと有難味はないのでしょうが、楽譜作成ソフトで写譜をしたら、ショパン嫌いだった私を180度変えるくらい、恐ろしく勉強になり理解が深まりそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=MIIPK483fBQ

https://www.youtube.com/watch?v=g5atakzKAEs

何より、アマオケに所属していたころのように時間に拘束されないのがいいです。厳しい練習も要らず(笑)、自分のペースでのんびりと気楽にできますので・・・。

ショパンの写譜も、マジでやってみようかなあ。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

そういえば雅之さんはショパン嫌いでしたね・・・。
いや、この際写譜やってみてください。
しかし、こういうソフトを使って素人の僕も写譜やると面白いかもですね。
興味深いです。
ありがとうございます。

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