じたばたせずに、やるべきことを、こつこつと

brahms_sextet1_abq.JPG節分は旧暦の大晦日にあたるが、ということは昨日が新年のスタートということになる。
新たな息吹が感じられる。見かけは決して良いことばかりではない。溜め込んでいた「灰汁」もじわじわと出てきている。ひとつひとつが問題提起であり、どうすべきかこのあたりで再考せよと問いかけられているようだ。大事なことは、地に足をしっかりつけ、軸をぶらさず、どっしりと構えることだろう。少しの辛抱(のような気がする)。

こういうときはやっぱりブラームスがよい(笑)。昔、少しずつブラームスの音楽が「わかりかけてきた」頃、「ブラームスはお好き」という題名に惹かれて、フランソワーズ・サガンの小説をいろいろと読み漁ったことを思い出した。昭和55年に発行されている新潮文庫(朝吹登水子訳)のその一冊は、長い間手に取られることもなく日光のせいで随分赤茶けている。

ぱらっと開いたところが、偶然にもタイトルの所以の部分、第6章だった。

・・・彼女は詩的だと思った、なぜなら、11月の澄み切った空にふたたび太陽が姿をあらわして、部屋中をあたたかい光と影とで満たしていたからである。
『6時に、プレイエル・ホールでとてもいい音楽会があります』とシモンは書いていた、『ブラームスはお好きですか?きのうは失礼しました』ポールはほほえんだ。彼女は2行目の『ブラームスはお好きですか?』にほほえんだのである。・・・

何気ないこの描写の中には明と暗、陰と陽、表と裏、そういう「全て」が刻み込まれている。フランス人らしい何とも洒落た表現だ。でも、なぜブラームスだったのだろうか?その音楽には喜びの感情も悲しみの感情も同質で聴こえるから?いや、それなら他の作曲家の音楽だって同じはずである。

・・・
「ブラームスは好きかい?」とロジェがわらいながら言った。
ポールは彼に背をむけていたが、あまり急に後ろを振り向いたので、ロジェは一歩あとずさりした。
「なぜそんなこときくの?」
「帰りみち、音楽会の一部をラジオで聞いたからさ」
「ええ、そりゃそうね、中継されたんだわ、そうだわ・・・でもあなたの音楽趣味にびっくりしたのよ」
「君の音楽趣味にもびっくりしたよ。いったい、どういう風の吹きまわしで音楽会なんかに行ったの?ダレのところでトランプでもしているんだと思っていたよ。それとも・・・」
・・・

ブラームスが好きだということは意外なことなんだ!
男性的で甘いメロディも少なく渋いからか?
まぁよい。あまりにとりとめもない・・・。

この小説の中の音楽会で演奏される音楽はおそらく昨日採り上げたピアノ協奏曲第1番だと思われるが、ブラームスの音楽の中で最も甘美なメロディをもつ青年時代の傑作でも聴こう。

ブラームス:弦楽六重奏曲第1番変ロ長調作品18
アマデウス・アンサンブル
アルバン・ベルク四重奏団員

1990年1月、ウィーン・コンツェルトハウスでのライヴ録音。今はなきアマデウス四重奏団のメンバーとABQのメンバーによる合同演奏。僕は壮年期のアマデウス・カルテットがセシル・アロノヴィッツらを迎えて録音した演奏の方が圧倒的に好みなのだが、ペーター・シドロフ亡き後、残った3人がアンサンブルとして活動をしていたあの頃の「記録」としてとても貴重だという思いもあって、あえてこのCDを聴いてみた。いい曲だ。

ところで、昔カザルスホールで聴いた澤和樹カルテットのメンバーとアマデウス・アンサンブルとが演奏した六重奏曲は素晴らしかったなぁ・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
「ブラームスはお好き」は絶妙なタイトルでしたね。
年上の女性との恋愛でこれほどサマになるクラシックの作曲家は、あまり思い付きません。ショパンだとちょっと意味合いが違いますし、やはりブラームスがいいですね。弦楽六重奏曲第1番は、確かにこの小説の雰囲気にぴったりです。
ブラームス、両親が結婚したのは父24歳、母41歳の時で、彼が生まれたのは母が44歳の時の時ですから、こういう家庭環境ではマザコンになるわけですね。ブルックナーはロリコンだったと言われていますので、この二人、女性への志向が真逆で、気が合うはずもなかったわけです。ちなみに、私もどちらか選べと言われればロリコンよりはマザコンなのですが、自分がこの歳にもなると、理想の年上の女性は大変な年齢になってしまいます・・・失礼m(_ _)m
よし! 岡本さんのブログを読んでついに決心しました。
今日こそ前から憧れていた年上の女性に、車の中でCDを聴かせながら告白します!
Je te veux (あなたが欲しい)と・・・。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3523509
いろんなバージョンで攻めます・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=sLjRqCdyZTc&feature=related

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
サガンはよくもまぁこんな洒落たタイトルを考えついたものだと思います。確かに年上の女性との恋愛という意味ではブラームスがぴったりですね。
僕も雅之さん同様間違いなく「マザコン」ですね(笑)。
>今日こそ前から憧れていた年上の女性に、車の中でCDを聴かせながら告白します!
すばらしい!!(笑)
ちなみに、愛知とし子のファースト・アルバムにもこの曲は収録されています。

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