バーンスタイン最後のコンサート

今月の「早わかりクラシック音楽講座」のテーマは、リストが「リズムの神化」、ワーグナーが「舞踏の聖化」と呼んだベートーヴェンの傑作、交響曲第7番である。僕が初めてこの楽曲を聴いたのは確か高校1年生の頃、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニーによる戦時中の実況録音によってであった。古びた録音の中から聴こえてくる音楽に心を打たれた。その後、クレンペラーの有名なスタジオ録音にも触れ、そしてカール・ベームが最後の来日時に人見記念講堂で演奏したライヴの映像を観た。

この音楽の懐の深さに驚嘆しつつ、後期の入口に立とうとしていたベートーヴェンの凄さに圧倒され、一時期は寝ても覚めても第7交響曲という日々を過ごしていたことが懐かしく思い出される。

実演では、同じく人見記念講堂でカルロス・クライバー指揮バイエルン国立管の来日公演を聴き、感銘を受けた。そして、朝比奈隆指揮新日本フィルによるベートーヴェン・ツィクルスにおける真の名演奏に触れたときは、拍手をしながらもはや腰を抜かし立ち上がれないほど感動した。

しかしながら、今となってはベートーヴェンの交響曲を聴く機会はめっきり少なくなった。それでも、講座で採り上げるにあたり久しぶりに様々な演奏を聴き比べてみると、素晴らしい音楽に違いないことを再確認させられる。バーンスタインの最後のコンサートもこの交響曲だったが、この録音を聴くと、朝比奈隆の名古屋での最後の演奏会（チャイコフスキーの第5交響曲を振ったとき）の録音を聴いた時と似たような感覚に襲われる。指揮者本人は「最後」にするつもりはまったくなかったと思うのだが、明らかに「最後である」という印象を与える、ある意味壮絶な（あるいは悟りを開いたかのような）演奏が繰り広げられるのである。

バーンスタイン・最後のコンサート
ベートーヴェン：交響曲第7番イ長調作品92
レナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団（1990.8.19Live）

終楽章の途中で咳が止まらなくなり、ハンカチーフを口元にあて、苦しそうに指揮をとっていたことを後のレポートで知ったが、録音だけを聴く限りにおいてはそのような様子はまったく感じられない。晩年のバーンスタインそのままという粘っこくかつ鈍足のテンポが一層重みを付け加えているようだが、初めて聴いたときの印象に比べ、それほど悪くはない演奏に今は思える。身体がどんなに悲鳴をあげようが、バーンスタインはバーンスタインなのである。

友人の紹介で東銀座にあるベジタリアン・カフェ「ain soph」に行く。美味しかった。そして、新しい出逢いに感謝。ありがとうございます。

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