デュトワ指揮モントリオール響の「くるみ割り人形」(1992.5録音)ほかを聴いて思ふ

この楽器(チェレスタ)を誰にも見せないでほしい。特にリムスキー=コルサコフやグラズノフに知られ、自分より先に使われたくないから、絶対に秘密を守るように。
作曲家別名曲解説ライブラリー8「チャイコフスキー」(音楽之友社)P102

器の小ささと言うと失礼か、しかし、当時としてはロシアにまったく伝わっていなかった新楽器を、どうしても最初に使いたかったという野心は理解できる。いかにも人間チャイコフスキーらしい。

クリスマスはお気に入りの「くるみ割り人形」。
私見だけれど、「くるみ割り」は、チャイコフスキーの最高傑作。
シャルル・デュトワがモントリオール交響楽団と録音した音盤が素晴らしい。
何より第2幕最後の「花のワルツ」からグラン・パ・ド・ドゥ、そして終幕のワルツとアポテオーズの自然でありながら濃密な流れの美しさ!!

人心を掴む表現力の豊かさと、甘い囁きのような、音の端々から滲み出る官能と言えば大袈裟か。

そういえば、先日、彼のかつてのセクハラ問題が今頃になって浮上してニュースになっていたが、本人は「身に覚えがない」と否定しているそう。真相はわからないけれど、デュトワの、かつてのアルゲリッチとの離婚にまつわる女性関係のトラブルなどを考慮してみても、それは人間の深層の不安から生じる、無意識下で背面的意図を持った「ゲーム」が招いた結果なのだろうとも思われる。いずれにせよ、何十年も昔の出来事がこうやって表に出てくるというのは、何とも恐ろしいこと。仮に「無意識」にせよ、すべてはノー・エクスキューズ。気をつけねば。

チャイコフスキー:
・バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71(1992.5.7&8録音)
・バレエ音楽「眠れる森の美女」~オーロラ姫の結婚(ディアギレフ版)(1992.10.29録音)
シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

付録の「眠れる森の美女」から「オーロラ姫の結婚」における、地に足の着いたデュトワの棒に感無量。崇高な踊りと結びつくチャイコフスキーの生み出す旋律は、どの瞬間も美しく見事だ。すべてはハーモニー。

あわせて、ビーチ・ボーイズのクリスマス・アルバム。
わずか30分にも満たないアルバムは、人の声のハーモニーのある意味究極の形を表わし、録音から50余年を経た今も決して色褪せない。

当時、ヒット曲を作り続けるプレッシャー、ツアーの疲れ、ドラッグの影響、そして米国を席巻していたビートルズ旋風への恐怖など、様々な要因がブライアン・ウィルソンの精神状態をボロボロにしていったのだが、直後、ついに彼はコンサート・ツアーには出ないことを宣言し、スタジオ隠遁を始めることになる。この専念の決意こそが、かの「ペット・サウンズ」を生み出すのだから、起こるすべてに無駄はないということだ。

・The Beach Boys’ Christmas Album (1964)

Personnel
Al Jardine (lead, harmony and backing vocals; rhythm guitar; handclaps)
Mike Love (lead, harmony and backing vocals; handclaps)
Brian Wilson (lead, harmony and backing vocals; bass; keyboards; handclaps)
Carl Wilson (harmony and backing vocals; lead guitar; handclaps)
Dennis Wilson (harmony, backing and spoken word vocals; drums, handclaps)

アーヴィン・バーリンの名曲「ホワイト・クリスマス」や定番フレッド・クーツの「サンタが街にやって来る」など、いかにもビーチ・ボーイズらしいアレンジとコーラスの妙。しかし、それ以上に美しいのは、やっぱりブライアン作の諸曲。天才だ。すべてはハーモニー。

そして、クリスマスの締めに、マーヴィン・ゲイ&ダイアナ・ロスの”You Are Everything”
お互いが、別れた相手を忘れられないという意味深歌詞の名曲。
冒頭、マーヴィン・ゲイの台詞” Oh darling, I want to be everything to you”の色香に卒倒。

You are everything
And everything is you
Oh, you are everything
And everything is you
‘Cause you are everything
And everything is you

・Diana Ross & Marvin Gaye:You Are Everything (1973)

ただひたすら官能を歌う二人に感激に触発され、マーヴィン・ゲイの”the master”というタイトルの4枚組ボックスから3枚目を聴いた。

・Marvin Gaye:the master 1961-1984 (1995)

“What’s Going On”や”Let’s Get It On”、”I Want You”など傑作揃い踏みなれど、“Pledging My Love”や“My Mistake (Was To Love You)”など、マーヴィンの、ダイアナとの甘いデュエットがやっぱり最高。

Forever my darling our love will be true
Always and forever I’ll love just you
Just promise me darling your love in return
Make this fire in my soul forever burn

すべてはハーモニー。

 

 

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