イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ「調和の霊感」(1983.8録音)ほかを聴いて思ふ

どんなときも心底揺さぶられ、感動を覚えるのが、アントニオ・ヴィヴァルディの緩徐楽章。彼が在家の僧職に就いていたことが関係するのだろうか、聖なる世界と俗なる世界が見事に融合し、数多創造された音楽は、天上の美しさと豊かさ、同時に地上の喧騒とあまりに人間的な愉悦と哀惜を併せ持つ。

何より耳を澄ますことだ。
思考を停止し、自分の中で何が起こっているのかをただ感じることだ。

1711年に出版された「調和の霊感」は、瞬く間にヨーロッパ中に流布したそうだ。ピエタ女子養育院で教師をする傍ら、ヴィヴァルディが書き溜めた作品からこれぞというべき12曲が自選された極めつけの協奏曲集ゆえ、大変な人気を博しただろうことが容易に想像できる。ちなみに、バッハも、ヨハン・エルンスト公子から依頼を受け、12曲のうち5曲を編曲していることが興味深い。

ヴィヴァルディ:12の協奏曲集「調和の霊感」作品3
・(4つのヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第1番ニ長調RV549
・(2つのヴァイオリンとチェロのオブリガート付)協奏曲第2番ト短調RV578
・(独奏ヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第3番ト長調RV310
・(4つのヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第4番ホ短RV550
・(2つのヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第5番イ長調RV519
・(独奏ヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第6番イ短調RV356
・(4つのヴァイオリンとチェロのオブリガート付)協奏曲第7番ヘ長調RV567
・(2つのヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第8番イ短調RV522
・(独奏ヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第9番ニ長調RV230
・(4つのヴァイオリンとチェロのオブリガート付)協奏曲第10番ロ短調RV580
・(2つのヴァイオリンとチェロのオブリガート付)協奏曲第11番ニ短調RV565
・(独奏ヴァイオリンのオブリガート付)協奏曲第12番ホ長調RV265
ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン)
アンナ・マリア・コトーニ(ヴァイオリン)
パスクァーレ・ペルグリーノ(ヴァイオリン)
クラウディオ・ブッカレッラ(ヴァイオリン)
フランチェスコ・ストラーノ(チェロ)
イ・ムジチ合奏団(1983.8録音)

協奏曲第10番ロ短調RV580第1楽章アレグロの喜び。バッハもそこには感応し、4台のチェンバロのための協奏曲に編曲した。また、第2楽章ラルゴの篤い信仰心。ヴィヴァルディの世俗を讃える歌に、バッハが宗教心を吹き込んだ妙。

J.S.バッハ:
・4台のチェンバロのための協奏曲イ短調BWV1065
・3台のチェンバロのための協奏曲ハ長調BWV1064
・3台のチェンバロのための協奏曲ニ短調BWV1063
ケネス・ギルバート(チェンバロ)
ラルス・ウルリク・モールテンセン(チェンバロ)
ニコラス・クレーマー(チェンバロ)
トレヴァー・ピノック(チェンバロ)
トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート(1981録音)

愉悦的イタリアの風、そして、悲哀のドイツの音。
なるほど、喜びは天からの贈物であり、悲しみは地からのそれだとわかる。
縁というものは実に不可思議。たぶん、二人は過去世において兄弟だったのだろうと思う。

その教会は北の海に向かった断崖の上に建っていた。かつて漁業で栄えた海辺の村の教会であったが、今は村は寂れ、教会と司祭館だけが、まるで孤独な灯台のように、海からの風に吹かれている。それでも美しい風景に恵まれていることもあって、信仰のためというより、風光を目あてに訪ねる人もすくなくなかった。
「百合 7月」
辻邦生/山本容子(銅版画)「花のレクイエム」(新潮社)P57

ところで、新川電機株式会社様のWEBマガジンのコラム最終回が公開された。今回はヴィヴァルディについて書いた。

 

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