クララ・シューマンのピアノ協奏曲

clara_schumann_piano_concerto.jpgあと10日で今年も終わりだが、この1週間がバタバタで忙しい。年賀状印刷とひとりひとりに一言挨拶を書くのもままならないほどで、ともかく時間を見つけては少しずつこなしているような調子。23日の天皇誕生日には瑞浪市の地域交流センターで「愛知とし子が贈るクリスマスコンサート」が開催されるのだが、そこで少しだけ解説することにもなっている。明後日の早朝に東京を発ち、コンサートを終え、クリスマス・イヴに東京に戻る予定だが、帰ったら帰ったで、「強み発見」勉強会やクラシック音楽講座、そしてエルーデ・サロン主催の忘年会を3回、と毎日が目まぐるしい。

ところで、23日のプログラムはドビュッシーの「月の光」やマスカーニの「カヴァレリア」間奏曲のほか、ムソルグスキーの「展覧会の絵」抜粋など、愛知とし子お得意の作品が目白押しだが、中でも出色はクララ・シューマンの「束の間の小品」作品15から第1曲。これは、先日の「恋物語」のアンコールで初めて舞台にかけられたもので、お客様に大変好評だったゆえ地元の皆様にもぜひともお届けしたいという想いから選ばれたもの(というより愛知自身が弾きたいだけなのだが・・・笑)。それにしてもこの音楽は美しい。クララがもっと多くの作品を残していたらどんなだったのだろう・・・、例えば、シンフォニーなど書いていたら大変な作品ができあがっていたのではないか・・・、そんなことを想像させてくれる名作だと思う。

クララが交響曲を書いていたら、などとついつい妄想してしまったが、残されている彼女の若書きのピアノ協奏曲を聴いたればこそ。シューマンのそれに決して劣らず、ショパンのそれよりはより調和がとれており、しかもブラームスのそれに間違いなく影響を与えたであろうことがよくわかる素敵なコンチェルト。

浜松市楽器博物館コレクションシリーズ16
シューマン夫妻の室内楽
・クララ・ヴィーク(シューマン):ピアノ協奏曲イ短調作品7(ドイツ初版に基づく弦楽五重奏伴奏付き)
・ロベルト・シューマン:ピアノ五重奏曲変ホ長調作品44
・クララ・シューマン:協奏曲楽章ヘ短調
小倉貴久子(フォルテピアノ)、桐山建志(ヴァイオリン)、藤村政芳(ヴァイオリン)、長岡聡季(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)、笠原勝二(コントラバス)

伝コンラート・グラーフ・ピアノによる演奏。クララの協奏曲は、彼女が13歳~16歳の時に作曲した作品だが、第2楽章の夢見るような美しさ(独奏チェロとピアノの対話!)とフィナーレの弾けんばかりの愉悦感は夫ロベルトとはまったく異質のもの。どちらかというと僕にはフェリックス・メンデルスゾーンの資質に近いものが感じられる。メンデルスゾーンが自分名義で発表した作品も、そのうちいくつかは実はいくつかは姉ファニーの生み出したものだと言われるくらいだから、ひょっとすると女性特有の包み込むような包容力というか、太陽のような明るさ・温かさが音楽に反映しているのかも(弦楽五重奏伴奏版という点も見
逃せまい)。ついつい繰り返して聴いてしまう・・・。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
23日は私は前から別な年末行事の予定が入っておりまして、つい最近までいろいろと調整を試みましたが、どうしても瑞浪での演奏会には伺うことができなくなりました。残念で堪りません。「恋物語」での感動を、凱旋帰郷コンサート(?笑)で、もう一度聴いてみたいと思ったんですが・・・。考えてみると、愛知さんが弾く、ムソルグスキーの「展覧会の絵」も未聴でしたし、抜粋でもいいから聴きたかったのですが(涙)、またの機会に楽しみにとっておきます!
>浜松市楽器博物館コレクションシリーズ16
このCDも未聴なのですが、これはよさそうですね! おっしゃるようにドイツ初版に基づく弦楽五重奏伴奏版というのが興味深いです。クララのピアノ協奏曲イ短調作品7は私も彼女の作品に開眼したきっかけになった曲で、とても愛着がありますし、浜松市楽器博物館所蔵の伝コンラート・グラーフ・ピアノのレトロな音色も別な録音で聴き知っており大好きでしたので、これはぜひ入手し聴いてみたいと思います。ご紹介いただき、ありがとうございます。
・・・・・・ロベルト・シューマンとは8人の子供を儲けたため、1840年代はひっきりなしに妊娠しながら、ヨーロッパを回って演奏会を行っており、大変なハードスケジュールであったことが日記に残されている。ただし子沢山ではあったが長男エミールは1歳で死亡し、末子のフェリックスはロベルトが精神病院に収容されたので父の顔を覚えていない(彼には詩の才能があり、ブラームスは「我が恋は緑」Op.63-5など3曲の詩に曲を付けている)。三男フェルディナントはロベルトの精神障害が部分的に遺伝したことが原因で自殺した。なお、ロベルトは子煩悩であったが、彼女自身は「子供は3、4人で十分」という言葉を残している。・・・・・・ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
こういう事実は、やはり現代人には想像し難いですよね。そりゃあ忙し過ぎて、曲を創作する余力や時間など残っていないのも当然です。家事、多くの子の育児、よき妻、そして演奏という仕事、全部の完璧さを求められたら、私ならもの凄い重圧で、夫以上に気が狂いそうになります(笑)。「やれるものならやってみて!」というクララの声が聞こえてきそうです。すると、ブラームスに癒しを求める気持ちになったのも理解できるってことですか!
もしクララが後年、本物の子供ではなく、夫に負けないくらい「作品」という子供をたくさん生みだしてくれたなら、そこにはどんなに豊饒な世界が拡がっていたことだろうと、つい想像してしまいます。永久に叶わぬ夢ですが・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
今回は残念ですが、またの機会にですね。
クララのピアノ協奏曲、いいですねぇ。以前ご紹介いただいたオーケストラ版については僕も未聴ですので、聴いてみようと思っています。
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-511/#comments
>こういう事実は、やはり現代人には想像し難いですよね。そりゃあ忙し過ぎて、曲を創作する余力や時間など残っていないのも当然です。
・・・ですね。
>すると、ブラームスに癒しを求める気持ちになったのも理解できるってことですか!
その通りだと思います(笑)。
>そこにはどんなに豊饒な世界が拡がっていたことだろうと、つい想像してしまいます。永久に叶わぬ夢ですが・・・。
同じく、です。まぁ、でも空想って楽しいですから、それはそれで良しとしましょう。

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