The Band “Music From Big Pink 50th Anniversary Edition”を聴いて思ふ

僕には幼少の記憶が多々残る。
ある1枚のモノクロ集合写真を通して、そのときその場の空気感まで鮮明に思い出せるくらい。1968年11月のこと。

彼の回りの連中はみんな彼に「なあ、あいつらをクビにしろよ。こんなことをしていたら、きみの未来をつぶすようなものだ」と言っていた。でもディランはそうしなかった。彼には先が読めていたが、連中にはわからなかったのだろう。あるいは彼にわれわれをクビにする度胸がなかっただけなのかもしれないが。
(「BAM」1983年3月6日号)
~「レコード・コレクターズ増刊アメリカン・ロックVOL2」P299

ロビー・ロバートソンは後年そう語る。
いつだって天才は先を見通す力があるものだ。そして、どこにでも転がっているチャンスを逃すことはない。

ザ・バンドのデビュー・アルバムを久しぶりに聴いた。
リリースから50年を経た今も燦然と輝く、渋いアルバム。
冒頭、”Tears Of Rage”からすでに完成したバンドの音楽。僕は、”Lonesome Suzie”を聴くたびに、仄々とした調子ながら悲しい歌に心が充たされ、幸せな気持ちになる。何だか男をやる気にさせる作品だ。

Lonesome Suzie
I can’t watch you crying no longer
If you can use me until you feel a little stronger
I guess just watching you has made me
Lonesome too
Why don’t we get together, what else can we do?

同時に、ボブ・ディランの「バイオグラフ」を久しぶりに聴いた。1965年10月録音の”Can You Please Crawl Out Your Window?”は、ディランとザ・バンドの初レコーディング曲。バンドの音にはうねりがあり、またディランの声には、気のせいか活気がある。ザ・バンドはディランになくてはならぬバンドだったんだとやっぱり思う。

ディランとわれわれはお互いに影響を与えあった。ディランはわれわれに新しいものすべてを与えてくれた。そして彼もわれわれから何かを得たはずだ。
(「ロック・ポップ・ソウル」)
~同上書P299

ロバートソンの言葉は相変わらず自信に溢れる。その通りなのだろう。

・The Band:Music From Big Pink 50th Anniversary Edition

Personnel
Jaime Robbie Robertson (electric and acoustic guitars, vocals)
Rick Danko (bass guitar, fiddle, vocals)
Richard Manuel (piano, organ, drums, vocals)
Garth Hudson (organ, piano, clavinet, soprano and tenor saxophone)
Levon Helm (drums, tambourine, vocals)

名作”I Shall Be Released”に涙する。特に、ボーナス・トラックの未発表アカペラ・バージョンの切なさ、美しさ!
後にディランがセルフ・カバーしたバージョンは、シンプルでありながらディランらしい力が漲り、これまた名曲であることを確信させてくれる音。

I see my light come shining
From the west down to the east
Any day now, any day now
I shall be released

この2019年にまた相応しい解放の歌!

ただ色がピンクだったんだ。それがなんだか可笑しくて、そこで僕たちは「ビッグ・ピンク」と呼び出した。冗談としてね。地下には僕たちの機材が全部そろえてあって、僕たちは輪になって演奏して、こうあるべき運命なんだと思える場所だった。
(ロビー・ロバートソン)

偶然か、必然か。やっぱり奇蹟というほかない。

・Bob Dylan:Biograph (1985)

 

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