振り返りはしないさ・・・

boston_dont_look_back.jpgそういえば2010年はBostonイヤーだと推測していたが(一般的に8年に一度降臨することで有名だった)、見事に裏切られた(笑)。この8年の間に、無くてはならないヴォーカリストBrad Delpが亡くなったこともその要因なのだろうが、昨日、ベーム&ウィーン・フィルのモーツァルトを聴き、「感情を超えるモノ」を感じたところからBoston号の”More Than a Feeling”をついつい思い出し、深夜に例のファースト・アルバムを久しぶりに耳にして悦に浸った。

それにしてもこのデビュー・アルバムは30年以上を経過した今でも十分通用するエネルギーに満ち溢れている。Bostonについてはベスト盤を入れてもほんの6枚に過ぎない音盤を思い出しては聴いてみるが、常に色褪せない。言い過ぎだとは思うが、モーツァルトやメンデルスゾーンを聴いている時と同質の「感動」を(少なくとも僕に)与えてくれるだから何十年も聴き継がれているロック音楽というものも捨てたものじゃない。

ただし、そのBostonにしても、レーベルとの契約の関係で仕方なく録音し、リリースされたセカンド・アルバムに関しては僕的にいまひとつ(だった)。
おそらく僕自身が受容できていない(いなかった)だけなのだろうが、Boston号にしては珍しく浅薄さを感じさせる作りになっている(いた)。

Boston:Don’t Look Back

Personnel
Tom Scholz(lead guitar, bass, keyboard)
Brad Delp(lead vocal)
Barry Goudreau(lead guitar, percussion)
Sib Hashian(drums, percussion)
Fran Sheehan(bass, percussion)

ひとつひとつは屈指の名曲たちだが、いかんせんアルバムとしての統一感に欠けるところが痛い。(・・・と思っていた)

昨日阿部敏郎さんの「いまここ塾」に行った。良かった。やっぱり、Tom Scholzはわかっているのかも(悟っているのかも)。どのアルバムをみても、その愛に溢れるメッセージが素晴らしい。そういうことが、阿部さんの講演に触れ、久しぶりに2枚目を聴いてようやく腑に落ちた。

“Don’t Look Back”では、振り返っても仕方がない、ただ「今」があるだけ、そして「道」が呼んでいると。すべては“The Journey”(旅)であり、“It’s Easy”-「無駄な時はない、僕は生きられる時に生きる。君が僕を受け入れてくれれば僕はここに」なのだと。

そう、心配することはひとつもないのである。Bostonのアルバムの中で唯一認めることができなかったセカンドの良さが急にわかった・・・。


5 COMMENTS

雅之

「レミドドソ♪」(D4 E4 C4 C3 G3)  
オーディオ評論家 長岡鉄男(1926年(大正15年)1月5日 – 2000年(平成12年)5月29 日)著 「長岡鉄男のレコード漫談 -玉石混交のレコード紹介240-」(昭和59年10月20日 第一刷発行 現在絶版)
より
〈空飛ぶディスクを追って〉
 空飛ぶ円盤とのつきあいも三十年になる。昔々、東京は五反田の駅前で貸本屋をやっていた荒井欣一さんという人がいて、日本空飛ぶ円盤研究会というのを作ろうと呼びかけた。その呼びかけに集まった人間の中に筆者もいたのだが、なんと、百人あまりの会員の中に、黛敏郎、三島由紀夫、なんて名前もあったのだ。当時は円盤の存在は既定の事実のようにさえ思われていた。円盤はどこに着陸するのだろうか。円盤人とはどのようにコンタクトをとったらいいだろうか、ということが真剣に討議されていた。
 しばらくしてUFOという言葉がアメリカからやってきた。カッコイイ専門用語である。以来、ぼくらは円盤という言葉を使わないようにしてきた。円盤だけでなく、三角、四角、五角、星型、ドーナツ型、開板型にドーム型にコーン型と、あらゆる形状の飛行物体が出てきたからだ。そこで、シロウト(?)が円盤、円盤と騒いでいる時に、ぼくらはもう一度、昔懐かしい「空飛ぶ円盤」を使おうかと考えている。UFO即ち未確認飛行物体だから、はっきりしないわけである。しかし、テレビや週刊誌は、どこそこから飛来したUFOとはこういう外形で、何人乗りで、重力場推進で飛行するとかなんとか詳しく説明している。そんなにわかってりゃUFOじゃなくてIFOだ。もっとも、よくわかっているUFOもあることはある。外殻は強化プラスチックスの二重構造で、全体を機密性フィルムでカバー、内部構造については一部は企業秘密となっているが、操作は簡単で、熱湯を注いで三分間、お湯をこぼしてたれと青のりをかければでき上がりというやつだ。
 さて、話を元に戻して、円盤とくればディスク、UFOとレコードの関係は深いのである。UFOブームの火付け役となった古典、D・レスリーとG・アダムスキーの共著「空飛ぶ円盤実見記」(1953年)にも次のような記述がある。
―――1950年8月12日、スイスの聖ゴッタード峠の近くにあるコロンベの山村で、物理学教授を含む多数の人たちによって、八十~百位の空飛ぶ円盤が頭上を通過していくのが、目撃された。教授は「それらが通過する時にはオルガンのような音響を発していた」と発表し、他の者は「まるで天体の交響曲とでもいいたいような素晴らしい和音を持った音楽のようであった」と記している。
―――1947年5月22日、デンマークを横断した空飛ぶ円盤は、樹の頂の上をかすめて飛び去る時、快い音曲を口吟むような音を発していた。
―――ヴィマナ(空挺)は音調と旋律によって動かされ得る。
―――音楽のみによってある物は推進されていた。
―――アズテック最後の皇帝であったモンテズマが、忠良な臣下であるコルテッツに託した賜物の中に、レコード盤位の大きさの黄金の二つの円盤があった。この円盤は、その賜る相手に正確に適応した大きさでなければならなかった。そしてその所有者だけがこれを使用することができるようになっていたものである。
 この訳文は原文のままであり、今だったら、アステカ、モンテスマ、コルテスと書きたいところだが、とにかく原訳文を尊重する。それにしてもアステカの時代にゴールドディスクがあったというのは驚きだ。というわけでなにがなんだかわからんが、とにかくUFOレコードをランダムに取上げてみよう。
 まずは木星イオの上空を文字通りの空飛ぶ円盤、ゴールドディスクが一列隊列で飛行しているジャケットの「ヒットマシン/筒美京平の世界」といきたいところだが、よく考えたらUFOと何の関係もないのでやめた。あらためてトップは往年のアイドル、ピンクレディーの「UFO」
「バイ・バイ・カーニバル」武道館ライブ (日本ビクター SJX20047)(LPレコード)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FZDNXQ/ref=pd_lpo_k2_dp_sr_1?pf_rd_p=466449256&pf_rd_s=lpo-top-stripe&pf_rd_t=201&pf_rd_i=B000FZDOGC&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_r=0WXE8JPCQEREC2NV3A25
 B面バンド2に「UFO」が入っている。レンジもわりと広く、くせのない録音で、ライヴのよさが出ている。ちょっと甘さとほこりっぽさが気になるが、ライヴだから仕方がないともいえる。
(中略)
・・・・・・かくて本命登場。UFOジャケットである。といってもUFOを扱ったジャケットも数は多い。その中でわりとポピュラーなものを拾ってみよう。
 まずは〝ボストン〟のデビュー盤(米エピック PE34186)(LPレコード)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000NY1462?ie=UTF8&tag=opus3net-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=B000NY1462
 76年プレスである。爆発する地球から超巨大円盤が次々と飛び出してくるジャケット。林立する超高層ビル群をのっけて飛ぶのだからたいへんな大きさだ。ただし、円盤のデザインはあまりよくない。円盤というよりはクラゲに近いし、よく見るとギターなのである。六本弦なのに駒が四つしかないというへんなギターだ。音はなかなかいい。中音域がしっかりしているし、ローエンドも80Hz18db/octぐらいでまあまあである。
 
 ボストンの第二弾(米エピック FE35050)(LPレコード)(岡本さん本日ご紹介のアルバム)
 デビュー盤と同じデザインの円盤が未知の惑星に着陸するシーン。イラストレーターは別の人物で、こっちの方が絵はうまい。巨大な水晶岩壁の谷間に円盤が着陸するのだが、水晶の岩ならクォーツロックだ。そこまで考えてのデザインかどうかは知らんが、音は意外とつまらない。エネルギー分布で見るとローエンドが少しのびているがアッと驚くほどのものではないし、中音域はむしろデビュー盤よりレベルが低く、音としては歪み感がある。
 ボストンが出ればお次は当然ELOだ。・・・・・・(以下略)
ああ、古き良き昭和の香り・・・。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
長岡鉄男氏の文章は、まさに古き良き昭和の香りを醸しだしてますね。懐かしいです。
しかし、この書籍については所有していないので、ボストンに関する文章も初めて読みました。ご紹介ありがとうございます。
セカンドアルバムについての長岡氏のコメント、エネルギー分布はともかくとしてそのまま僕も同じようなことを感じました。
ボストンの次はELOなんですね・・・。これも久しぶりに聴いてみようかなぁ。

返信する
雅之

「長岡鉄男のレコード漫談 -玉石混交のレコード紹介240-」(音楽之友社 絶版本)のご紹介した文章にすっ飛ばし転記ミスがありましたので、お詫びし訂正します。
× そこで、シロウト(?)が円盤、円盤と騒いでいる時に、ぼくらはもう一度、昔懐かしい「空飛ぶ円盤」を使おうかと考えている。
○ そこで、シロウト(?)が円盤、円盤と騒いでいる時に、ぼくらはUFOという言葉を使っていたのである。ところが最近はシロウトがUFOを使い出したので、もう一度、昔懐かしい「空飛ぶ円盤」を使おうかと考えている。
せっかくの再々コメントなので、・・・ボストンが出ればお次は当然ELOだ・・・以降の内容を、もう少しだけご紹介しておきますね(笑)。
・・・・・・ボストンが出ればお次は当然ELOだ。
Out of the Blue  E.L.O. (米JET JTLA823L2)(LPレコード)
http://www.amazon.co.jp/Out-Blue-Elo/dp/B0015XAT3Y/ref=sr_1_3?s=music&ie=UTF8&qid=1296594253&sr=1-3
 このジャケットは正真正銘の円盤だが、UFOというよりはNASAのPRみたいな感じで、スペースシャトルのための出入口を持った宇宙ステーションである。このジャケットはダブルだから、開いて表と裏と別々に写真をとらなければ本当のよさがわからない。音はなかなかいい。レンジも広いことはエネルギー分布を見てもわかるだろう(スペアナ写真付)。ELOとくればやっぱりEW&Fだ。
I AM EW&F (米ARC FC35730)(LPレコード)
http://www.jpware.com/auctionInfo.php?id=f95958761
 これはジャケットの表紙を見ても、古代エジプトの遺跡が中心で円盤とは関係がなさそうだが、問題は裏表紙だ。古代と中世と現代が張り合っているような地上の光景を見ながら、四機のアダムスキー型円盤が飛んでいる。写真では小さ過ぎて点にしか見えないと思うが、実物のジャケットで見るとまぎれもないアダムスキー型である。電灯の笠のような本体、上部に窓、底面に三個の着陸ギアが見えるというのがアダムスキー型の特長だ。着陸用ギアというのはテニスボールみたいなもので、その他、底面中央にベルのようなものも見える。アダムスキーは電灯の笠とこわれたベルとボールと接着剤とパテでこの円盤を作ったといわれているが、たぶん間違いないと思う。音はたいしたことはない。荒れたやかましい音で、Dレンジが狭い。fとffの連続でpがないという典型的なディスコサウンドである。・・・・・・(以下略)

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
わざわざありがとうございます。
ELOについてもそうですが、アース、ウィンド&ファイアーも懐かしいですね。昔を思い出してしまいます。
それにしても久しぶりに長岡氏の頭の中って最高ですね。
アカデミック、サブカル、いずれにも簡単に振れられそうなところが好きです。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む