スーパードライ!

webern_3_boulez.jpg

新しい年が始まった。
特に何をしたというわけではないのだが、久しぶりに丸一日かけてミーティングをしたものだからかなり疲れた(笑)。ただし、ひとつ大きな収穫を挙げるとするなら、当たり前のことなのだが、ターゲットは徹底的に絞り込まなきゃいけないということと、提供したいことをできるだけ削ぎ落としてシンプルに設定することが重要だということがあらためてわかったこと。 

確かにそう。誰にそれを伝えたいのか、そして具体的に何を知らせたいのか、それがわかりやすければわかりやすいほど、受け容れやすいし、広まりやすい。僕に何ができるかはまったくもって未知だが、できる限りのことをやって貢献したいと思った。

クラシック音楽の世界でも、ロマン派以降音楽の「質量」は最大限肥大化した。その真骨頂がマーラーの第8交響曲なのか、あるいはシェーンベルクの「グレの歌」なのか、その辺りは判断しかねるが、行き着くところまで行って、その後の作曲家を随分悩ませた。そして、シェーンベルクが十二音技法を編み出し、現代音楽というもの可能性を明らかに拡げたが、その方法論をベースにして極限まで最小化した音楽がアントン・ヴェーベルンだった。彼の音楽はどれもコクがありながら真にキレがある。まるで「アサヒ・スーパードライ」のよう(笑)。ブーレーズによるヴェーベルン全集から1枚を取り出した。

ヴェーベルン:
・ピアノ五重奏曲
・無伴奏合唱曲「軽やかなる小舟にて逃れよ」作品2(BBCシンガーズ)
・リルケの詩による2つの歌曲作品8
・管弦楽のための5つの小品作品10
・4つの管弦楽歌曲作品13
・6つの歌曲作品14
・5つの宗教的歌曲作品15
・ラテン語詩による5つのカノン作品16
・3つの宗教的民謡作品17
・3つの歌曲作品18
・2つの歌曲作品19(BBCシンガーズ)
・四重奏曲作品22
・協奏曲作品24
フランソワ・ポレ(ソプラノ)
クリスティアーネ・エルゼ(ソプラノ)
ピエール=ローラン・エマール(ピアノ)
ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン

研ぎ澄まされた音の向こうには何が見えるのか?若い頃には絶対に見えなかった「ミクロでは何事もひとつである」ことが具に理解できる。抽象画の裏に潜む具体性が、あくまで冷徹に客観的に謳われる。


7 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>その方法論をベースにして極限まで最小化した音楽がアントン・ヴェーベルンだった。
>「ミクロでは何事もひとつである」ことが具に理解できる。
「曲」とは、どこまで最小化したものであっても「曲」なんだろうか?ということを、ご紹介のようなヴェーベルンの諸曲などを聴くと考えてしまいます。
たとえば、CMなどで使われる、いろんな企業のサウンドロゴは、曲といえるのでしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=9rEko2Ofbgo&feature=related
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090223/1023993/?SS=expand-life&FD=-638114566
・・・・・・ここで素材としてのベートーヴェンが素晴らしいのは、1小節くらいに分解してしまっても、そこには〝ベートーヴェンである〟という非常に強いサインが現れているんです。これは、分解すると匿名性に消えてしまうような作曲家とは、まったく違う。・・・・・・野平一郎 (レコード芸術 2009年4月号22~25ページ 「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ――作曲家・ピアニストとして」より。 ぜひ全文をもう一度お読みください)
上記、野平さんへのインタビュー記事を読んで、細胞くらいにまで小さく分解してしまっても個性が曲に刻印されているとは、ベートーヴェンこそ、真に恐るべき「音響作曲家」なんだと思いました。
変な論法ですが、ヴェーベルンではなくベートーヴェンの曲がCMによく使われるのも、むべなるかな、そんなことを逆に考えました。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>細胞くらいにまで小さく分解してしまっても個性が曲に刻印されているとは、ベートーヴェンこそ、真に恐るべき「音響作曲家」なんだと思いました。
同感です。野平氏の文章読み直してみます。ありがとうございます。
企業のサウンドロゴは音楽というより効果音ですかね・・・。

返信する
雅之

>企業のサウンドロゴは音楽というより効果音ですかね・・・。
そのことを考える上で格好の作品があります。
篠原眞 作曲 『ブロードキャスティング』
私は小学生のころから知っている傑作なのですが、現在CDは入手不可能かと思われますので、下サイトにある「》 試聴 《」より、作品の一部をお聴きください。
http://art-into-life.com/?pid=16603094

返信する
岡本 浩和

>雅之様
ご紹介のCD、これは興味深いですねぇ。
篠原眞の『ブロードキャスティング』は初めて聴きましたが、こういう実験をしようとした創意にどちらかというと魅かれます。
音楽か効果音か・・・、こうなると判断が難しいところですね。
それにしても小学生からこういう「音楽」を聴いておられるとは、頭があがりません。

返信する
雅之

もうひとつ、別な角度から・・・。
サウンドロゴとは、ライトモチーフでもあるのではないでしょうか。
http://konton.cside.com/midi/ring.html
たとえば、前から話題にしているあのCMシリーズの企業サウンドロゴなど、
http://www.youtube.com/watch?v=ZGu7SGxNWyo&feature=fvw
毎年年末に聴く度に、違う角度から、「音」が夢を運んで「楽」しかったものです。山下達郎の楽曲とともに、このサウンドロゴなども、ライトモチーフといってあげてもよいような・・・(笑)。
音楽と非音楽の境界線を考えてみるのも、有意義ですね。
極論では、ピアノを指1本で弾く単音も、時と場合によっては音楽になり得る、ということだと思います。無音も・・・。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
>極論では、ピアノを指1本で弾く単音も、時と場合によっては音楽になり得る、ということだと思います。無音も・・・。
答は出そうにないですね(笑)。でもサウンドロゴ=ライトモチーフというのはよくわかります。同感です。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む