背水の陣の一期一会

昔聴いたバレンボイムのブラームスの模範はやっぱりここにあったんだろうと、遠い過去の記憶を辿りながら聴いてみた。

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83
エトヴィン・フィッシャー(ピアノ)
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1942.11.9Live)

連合軍により破壊された旧フィルハーモニーでのライブ。70年前のものとは思えない、割合と鮮明な録音を通してフィッシャーとフルトヴェングラーのブラームス解釈が心の奥底に迫ってくる。戦時中のほとんど明日が見えない世界の中で、かくも一期一会を体現したコンサートが他にあろうか(否、当時のヨーロッパでの演奏会はどれも極限的状況の中で開かれたものだろうからこの演奏会が決して特別のものではないことはわかるけれど)。

某区の若年層向け就職対策セミナーに招かれ、半日キャリアカウンセリングに携わった。
結論を言うと、就職先が見つからずに苦労を強いられている若者の特徴は、自発的な行動に乏しいことと、何より友人や知人との協同体制を組めていないところか。
人は独りでは生きてゆけないというが、どんな時も切磋琢磨できるライバルの存在が重要。傷のなめ合いは当然ご法度。仕事でも遊びでも徹底的にやり切るにはそういう競争相手がいるからこそ。仲間がいることの大切さをあらためて感じる次第。

そう、一期一会を創出するには、背水の陣を敷く覚悟がいるかも。ぬるま湯にいる限りそのあたりの「切羽詰り」感が非常に薄い。「自分はなぜ働くのか?」、再度自問自答し、働く意味、意義を明確にして事に臨んだ方が良い。

そういう観点からこの古びた録音を聴くのはうってつけ。
対ソ戦で独軍優位のまさに最後の時期に、2人の巨匠が一つになり来るべき悲劇を憂うかの如く聴衆に壮絶な語りかけをする様が録音の中の雰囲気から感じ取ることが可能。ブラームスの傑作協奏曲が泣く・・・。

1分1秒を大切にすることを教えてくれる貴重な記録。
過去を振り返るな、そして未来を心配するな、ただ現在を一生懸命に・・・。


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