AA印の悲しみ

意を決して1979年から購読し大事にとっておいた「レコード芸術」誌のバックナンバーを捨てることにした。特に古いものは貴重な記事が満載で、時折必要になるだろうからと押し入れの奥にしまっておいたが、正味32年分の雑誌の嵩は半端でなく、移動するのも一仕事だということと、数年に1度か2度どうしても過去の記事を思い出して漁りたくなるくらいで、実際にはほとんど不要になっていることからいわゆる「執着」の最たるものに過ぎないと判断した次第。それに、今や情報というとほとんどインターネットで十分だということもあり、しかもいつのどの号にその記事が掲載されていたのかを探るのにこれまた膨大なエネルギーを要するので、いっそのことと考えた・・・。
とはいえ、後ろ髪を引かれる思いも確かにある(苦笑)。いずれ誰かがデータ化し、いつどこからでも必要な記事にリーチできるようにしていただきたいものだ(相当なコストがかかるだろうがそれはやっぱり出版元の仕事だろうか・・・)。

我ながら驚くほどの書籍と音盤の量。
身軽になりたいと思いつつもやっぱり捨てられないのは思い入れのある音盤たち。何せ1枚1枚に思い出があり、随分前に聴き込んでいた録音などに久しぶりに出会うと途轍もない感動と懐かしさに襲われたりするところが何とも魅力的(人間は過去の記憶でアイデンティティを保っているというが、本当にその通り)。
最近は専らダウンロードを愛好する輩が増えているようでCDの売り上げが激減しているが、僕からしてみればジャケットを含めたすべてが作品の一つとして認識しているのだから、やっぱり「音盤そのもの」が欲しい。いわゆるジャケ買いなんかで初めての音楽に出逢い、感動するというのも醍醐味だし。

そんな中で、思い出したのがピアソラの1986年11月のウィーンでのライブ録音。
音楽の内容もさることながら、何がかっこいいかってジャケットの写真!!
まさにジャケ買いした1枚。

Astor Piazzolla ~ y su Quinteto Tango Nuevo:Tristezas de un Doble A(1986.11Live)

Personnel
Astor Piazzolla(bandoneon)
Pablo Ziegler(grandpiano)
Hector Console(contra-bass)
Fernando Suarez-Paz(violin)
Horacio Malviccino(guitar)

ピアソラの音楽は、クラシックやロックなど様々なジャンルのイディオムを縦横無尽に駆け巡る。時にバルトークやプロコフィエフ、あるいはロドリーゴの音楽に聞こえたり、時にイエスやクリムゾンなどプログレ風に聞こえたり・・・。これほど興味深い音楽家はなかなかいまい。しかし、彼の音楽に開眼するのがあまりに遅かった。来日公演に接するチャンスは間違いなくあったし、それは彼がまだまだブレイクする前だったから簡単にチケットは取れたはずだから。

1曲目、20分に及ぶ大インプロヴィゼーション「AA印の悲しみ」の何と壮大なことよ。


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