恋のざわめきにも似た・・・

風は十分冷たいけれど、外は間違いなく春の気配。
花粉症がほぼ完治した僕には「花粉」という魔物は一切関係ないけれど、どうやら今年も季節到来らしい。あと10日ほどで今年度も終了だが、この時期になると心も身体もそわそわする。特に今年はそう。いや、というよりどうも今日がそんな日の予感。
それはバックにBostonが流れているからかどうなのか、アップデイトの予定等の情報が一切表に出ない現時点でのラスト・アルバムには思春期の頃に感じた、恋のざわめきにも似たふわふわした心境心情を掻き立てる魔物が潜む(笑)。
半世紀近くも生きている中年男が到底感じるのは禁じられているような、あのドキドキする感覚、そう、若い頃には誰もが経験するであろう、あの感覚が不思議と蘇る。
うん、この音盤にはトリスタンの媚薬にも似たクスリがおそらく刷り込まれているのだろう、ほとんど何年かぶりかに久しぶりに取り出してみて、妙な懐かしさが溢れ出た。ちょうど10年前、2002年の作品。なのに、30年以上前のあの頃の記憶を呼び戻す・・・。
ボストンの作品はいつもそう。”Third Stage”まではオンタイムだった。でも、4枚目の”Walk On”以降のアルバムは(といってもベスト盤を含めて3枚しかないけれど・・・笑)僕的にはすぐにキャッチできなかったという共通性を持つ。それこそ何年も経過してから突然わかる、という代物。

Boston:Corporate America

ボストンが10年を経ても一向に再始動しない原因には間違いなくBrad Delpの死があろう。Tom Scholzがいれば基本的にボストンとして成立するのだろうが、しかしあのデルプの声(デルプのような声を出せる人はいるだろうけれど)がないと、この天才プロデューサー兼ギタリスト兼作曲が新作品を世に問うのに十分納得できるものが作り得ないと思ったのか。
少なくともデルプが亡くなる直前までは新作リリースの噂もあったくらいだから、彼の死とともに一旦出来上がっていたものを葬り去ったのか。
それにしてもこのミステリアスな具合がボストン好きをますますボストン・フリークにしてゆくのか。過去のどのアルバムのどこから聴いてみても、込み上げてくるのはやっぱり10代の頃の恋にも似た葛藤とワクワクと・・・。

自ずと頭に浮かぶのは、
島崎藤村の「若菜集」所収、『初恋』。

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

このアルバムのラスト・ナンバーは、前作”Walk On”に収録されていた”Livin’ for You”のライブ・バージョン(上手い!!)。

Livin’ without you never could be so wrong
Don’t need to say it, I never waited so long
Thinking about you in everything I do
Love is for givin’, I know I’m just livin’ for you


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