アバド指揮ヨーロッパ室内管のシューベルト管弦楽伴奏編曲歌曲集(2002.5Live)を聴いて思ふ
後世の作曲家がこぞって編曲に挑んだという事実が奇蹟的。
フランツ・シューベルトの歌の世界。わずか31年という生涯を駆け抜けた夭折の天才の真髄を抉る、管弦楽伴奏による詩と音楽の崇高さ。
ゲーテがいて、ハイネがいて、あるいはレルシュタープがいて。
そっと歌う僕の願いは
夜の中をあなたの許へ。
静かな森の中へ下りて来てください。
愛する人よ、僕のところへ!
「セレナード」(石井不二雄訳)
有名な旋律が僕たちの心をとらえる。
ここでのジャック・オッフェンバックの編曲は柔和で、特に弦のピツィカートをベースにした木管の響きが堪らない。トマス・クヴァストフのバリトンも深みがあり、また哀しみを湛え、真に迫る。