1975年3月25日のカール・ベーム!

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カール・ベーム&ベルリン・フィルのモーツァルト交響曲集は、一世代前(?)の一時代を築いた金字塔のひとつである。そして、ほぼ半世紀の時を経た今の時代でも並々ならぬ説得力を持つ傑作だと思うのだ。今や10枚セットのCDがわずか数千円で購入できてしまうゆえ、ありがたみに少々欠けるといえばそれまでだが、どの部分から聴いてみても、ここにはかつて少年の頃夢見たモーツァルトの目くるめく世界が充溢し、例えば掛けがえのない旋律美からはそこはかとない悲しみや天上的な喜びなどが感じられ、まるで全ての思考、感情がこの中に包括されているといっても言い過ぎではないだろうと思うほどの完成度を誇っている。本当に「心」までもがもっていかれてしまう。

中でも、「ジュピター」交響曲は、かつて愛聴したワルター&コロンビア響盤のその名の通りの壮麗さと威容にも匹敵し、そして僕がかねてより愛して止まないヨッフム&ウィーン・フィル盤(何とベーム追悼公演!)の老練の極みとはこれまた一線を画す若々しさを備えた、極めて普遍的な演奏である。もはやこの交響曲は年に何度かしか真剣に聴くことはなくなったが、時折不思議に聴きたくなる。60年代初頭のベームの音楽は若々しい。きびきびとしたテンポ感で、それでも一音一音が意味深く、常に前進する勢いのあるモーツァルトが展開される。
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1962.3録音)


先日、ベームがウィーン・フィルとともに初来日した折の実況録音のことは書いた。そう、1975年3月22日のNHKホールでのライブである。今日は、同月25日のコンサートから、まさにその「ジュピター」交響曲をじっくりと聴いてみた。

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1975.3.25実況録音)

わずか13年という時間の経過がこうも音楽を変えるのか?悪く言えば鈍重だが、しかしこれは単なる衰えではない。見事に軸が揺るがず、ウィーン・フィルの持つ美音を最大限に引き出し、雄渾で壮大なモーツァルトの音楽が繰り広げられる。ひょっとすると実況放送だという点も大いに影響しているだろう。NHK- FMによる生放送のエアチェック・テープゆえ、会場の熱気そのものまでもが克明に録られており、例えばそのことが、何年も後になって追想する僕たちに不要な錯覚を起こさせているのかもしれない。しかし、たとえそうだとしても、75年時点のベームの音楽が持つ「深み」と「輝き」は何ものにも代え難く、何より日本国民がベームの来日を首を長くして待ち、いよいよその時が来て、目の当たりにする老マエストロの前に跪かんばかりの尊敬と憧憬の念を発し、それがこの録音そのものに刻み込まれていると思えばすべては納得がいこう(開演を待つ聴衆の緊張感と、ベーム登場時の拍手喝采の嵐、そして演奏終了後の堰を切ったかのように飛び出す爆発的なブラヴォーの嵐がそのことを物語っている)。フィナーレに向け、いよいよ白熱し、エネルギーが外に放出される様を感じとるだけでもこの録音の価値はある。「すごい!」の一言だ。

若者の転職相談に乗ると、自分の若き日のことを思い出す。情報やイメージだけで仕事を捉えがち。ともかく何でもチャレンジしてみることだ。どこからどのようにチャンスが広がってゆくのかわからないのだから。

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コメント(6)

おはようございます。
実は私にとってモーツァルトの「ジュピター」は、ワルターでもヨッフムでもバーンスタインでもカラヤンでもなく、ましてやレヴァイン、アバドやピリオド派など論外なのです。極論すると、1970年代後半の、ベーム&ウィーン・フィルのいくつかのライヴ(残念ながら録音)しかないです。
「ジュピター」を聴いてギリシャ建築を
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E5%BB%BA%E7%AF%89
を思い浮かべるのも、ベームのこのころのライヴしかありませんし、終楽章を聴き終えて、真に「ブラボー」と絶叫したくなる演奏が他にあるでしょうか?


1975年・・・、徳大寺有恒 著「間違いだらけのクルマ選び」(草思社)
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%88-%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A0%E3%82%89%E3%81%91%E3%81%AE%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%9E%E9%81%B8%E3%81%B3-%E5%BE%B3%E5%A4%A7%E5%AF%BA-%E6%9C%89%E6%81%92/dp/4794214626/ref=pd_sim_b_1
の初版が出る1年前・・・。あのころは、確かに自動車にもクラシック音楽にも、「夢」や「憧れ」のある時代でした。
今乗っている車が古くなったので、先月私は「プリウス」を購入しました(納車は何と来年の6月!!)。
確かに「プリウス」にも「夢」や「憧れ」を覚えますが、それは70年代後半の人々が抱いていた車への「夢」や「憧れ」とは全く異質です(良い悪いの問題ではない)。


ハイブリットカーよりタイムマシンが欲しい!
70年代後半の、私より若い、あのころの父や母にも会ってみたい!
ドラえも~ん!!!!!(絶叫)

>雅之様
おはようございます。

>極論すると、1970年代後半の、ベーム&ウィーン・フィルのいくつかのライヴ(残念ながら録音)しかないです。
その気持ちは、今回75年の実況放送テープをお借りして聴いてみて痛いほどわかりました。空気感からまるで違います。喩えるの少し違うかもしれませんが、聴衆の反応がヴァントの最後の来日公演の時に感じたのと同質のものに思われます。
ところで、ベーム&ウィーン・フィルの「ジュピター」のライブ録音は他にあるんですか?スタジオ録音は知ってますが、ライブがあるならぜひ聴いてみたいですね。

徳大寺有恒 著「間違いだらけのクルマ選び」・・・これも一世を風靡した懐かしい書籍ですね。

>自動車にもクラシック音楽にも、「夢」や「憧れ」のある時代でした。
>ハイブリットカーよりタイムマシンが欲しい!
70年代後半の、私より若い、あのころの父や母にも会ってみたい!
タイムマシン!!いやぁ、おっしゃるとおりです!

私はこの時、シューベルト交響曲第7番、D.759、ロ短調「未完成」、第8番、D.944,ハ長調「ザ・グレート」を聴きに行きました。大変な名演でした。
今でもあの響きが残っています。アンコールがヴァーグナー、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲の堂々とした響きの素晴らしかったことも忘れられません。
1977年のベートーヴェン、交響曲第6番,Op.68、ヘ長調「田園」
第5番、Op.67、ハ短調「運命」も素晴らしいもので、アンコールが「レオノーレ序曲第3番」でした。これも聴き応え十分でした。
あの時のベームの素晴らしさはカラヤンをすっ飛ばしてしまったものがありました。1980年、最後の来日となった時は痛々しさもありましたね。翌年、87歳の誕生日を前に亡くなった時、こんな素晴らしい演奏が聴けただけでもよかったな、と思うことしきりですね。

>畑山千恵子様
こんにちは。
75年&77年の実演を聴かれているんですね!!とても羨ましいです。77年の「運命」&「田園」もCD化されてますよね。以前ブログでも採り上げましたが、本当に実演で聴いてみたかったです。
http://opus-3.net/blog/archives/2008/03/post-285/

こんばんは。
畑山様の、1975年や77年にベームの来日公演を聴かれたお話は本当に羨ましい限りですね! 私は13歳、15歳でしたから、仮に聴きに行けたとしても「猫に小判」「豚に真珠」だったかもです(笑)。
私は1978年くらいから、もっぱらNHK・FMで海外の演奏会をエア・チェックを楽しんでいたのですが、そうしているうちににベームの偉大さに気が付いたのです。
>ベーム&ウィーン・フィルの「ジュピター」のライブ録音は他にあるんですか?
ベームがお好きな、次の方のサイトをご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/mahdes/myckb3a3b.htm
この中に出て来るウィーン・フィルとの演奏、⑩1979年8月7日、ザルツブルク?(WALL Wall 7008-9)米国のカール・ベーム・ファン・クラブのCD-R(私は所有しておらず未聴)が、昔NHK・FMをエア・チェックした音源と同一だと推測されるのですが、私はこれがこの世のすべての「ジュピター」の演奏で、未だに最高だと信じております。
なお、聴き過ぎてカセットはテープがワカメになりオシャカになりました。この演奏の録音、また聴きたいものです。

>雅之様
こんばんは。

>1979年8月7日、ザルツブルク?(WALL Wall 7008-9)米国のカール・ベーム・ファン・クラブのCD-R(私は所有しておらず未聴)が、昔NHK・FMをエア・チェックした音源と同一だと推測される
なるほど、これは貴重なCDですね。当時のカセットテープが残っていたらぜひとも聴かせていただきたいところでした。残念です(涙)。

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