明日の「早わかりクラシック音楽講座」に備えて、採り上げるべき楽曲をどうするか決めようと音盤をとっかえひっかえ聴いてみた。ホルストの生涯を振り返るとき、若き日の彼がワーグナーの楽劇「神々の黄昏」に触れ、衝撃を受けたこと、そしてバッハの「ロ短調ミサ曲」の実演を聴いた時にはそれまで感じたことのない感銘を受けたことが音楽家としての大きな分岐点になり、その後しばらくはワーグナーの呪縛から逃れられないままこの大作曲家の影響下に楽曲を創造したことが、一方でホルストという作曲家の行く末を決定したことがよく見えて面白い。ホルストに限らず、19世紀末から20世紀前半にかけて、ヨーロッパの作曲家の多くはこの誇大妄想癖の変人音楽家の影響をもろに受けた。それくらいに巨大で、しかも人間の喜怒哀楽のあらゆる感情、そう聖なるものも俗なるものもすべて含んだ音楽作品を世に問うたワーグナーの「力」は途轍もないものなのである。それは、おそらく21世紀の今の時代になっても、バイロイトの内側で様々な問題が起こっていることを考えるにつけ、ワーグナーのもつ「見えない」力は依然として衰えていないことにもつながりそうだ。彼の「毒」は音楽に限ったことではない。
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