ボスコフスキー指揮モーツァルト合奏団のコントルダンスK.534(1966録音)ほかを聴いて思ふ

田園舞曲というそうだ。
人々の、喜びに溢れる踊りが目に見えるよう。

果たしてモーツァルトの機会音楽は、どちらかというと軽視されがちだろう。しかし、大作の狭間に咲き誇る小さなその花々は、間違いなく僕たちの心を癒す。

どこへ行っても野薔薇がまだ小さな硬い白い蕾をつけています。それの咲くのが待ち遠しくてなりません。これがこれから咲き乱れて、いいにおいをさせて、それからそれが散るころ、やっと避暑客たちが入り込んでくることでしょう。こういう夏場だけ人の集まってくる高原の、その季節に先立って花をさかせ、そしてその美しい花を誰にも見られず散って行ってしまうさまざまな花(たとえばこれから咲こうとする野薔薇もそうだし、どこへ行っても今を盛りに咲いている躑躅もそうですが)—そういう人馴れない、いかにも野生の花らしい花を、これから僕ひとりきりで思う存分に愛玩しようという気持は(何故なら村の人々はいま夏場の用意に忙しくて、そんな花なぞを見てはいられませんから)何ともいえずに爽やかで幸福です。どうぞ、都会にいたたまれないでこんな田舎暮しをするようなことになっている僕を不幸だとばかりお考えなさらないでください。
堀辰雄「風立ちぬ・美しい村」(新潮文庫)P11

田舎暮らしが不幸なはずがない。
世界は希望だ。また、世界は愉悦だ。特に、大自然との合一が望める田園は、今も昔もひらめきの宝庫だと思う。

1787年、グルックの後任としてようやくウィーン宮廷作曲家の地位を得たモーツァルトの仕事の大半は、宮廷舞曲会場のレドゥテン・ザールのための舞踊音楽を書くことのみだったらしい。モーツァルトは当時、いわばポピュラー作曲家だったということだ。

・4つのメヌエットK.601(1965録音)
・2つのメヌエットK.604(1966録音)
・コントルダンスを伴う2つのメヌエットK.463(448c)(1964録音)
・4つのコントルダンスK.101(250a)(1966録音)
・序曲と3つのコントルダンスK.106(588a)(1965録音)
・コントルダンス変ロ長調K.123(73g)(1965録音)
・4つのコントルダンスK.267(271c)(1964録音)
・チェルニン伯爵のためのコントルダンスK.269bから(1967録音)
・6つのコントルダンスK.462(448b)(1964録音)
・コントルダンスニ長調K.534「雷雨」(エリック・スミス編曲)(1966録音)
・コントルダンスハ長調K.535「戦争」(ベオグラードの包囲戦)(1965録音)
・3つのコントルダンスK.535a(エリック・スミス編曲)(1966録音)
・コントルダンスハ長調K.587「英雄コーブルクの勝利」(1966録音)
・2つのコントルダンスK.603(1965録音)
・コントルダンス変ホ長調K.607(605a)「女の勝利」(エリック・スミス編曲)(1965録音)
・5つのコントルダンスK.609(1965録音)
・コントルダンスト長調K.610「意地悪な娘たち」(1965録音)
ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・モーツァルト合奏団
・コントルダンス変ロ長調K.Anh.107(535b)(エリック・スミス編曲)(1988.8録音)
・コントルダンスニ長調K.565a(エリック・スミス補完)(1989.1録音)
サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
・ガヴォット変ロ長調K.300(1965録音)
ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・モーツァルト合奏団

それにしても当時のモーツァルトの窮状はどれほど大変なことだったか。
幾度もの金の無心を示す、残された手紙を読むにつけ、よくもそんな状況で舞曲などが書けたものだと感心する。いや、喉から手が出るくらい金が必要だったからこそ書かざるを得なかったのだが。
ところで、5つのコントルダンスK.609の第1番ハ長調は「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」。実に素敵なダンス。最高だ。

それにしても、ボスコフスキーのウィーン情緒は、どこか野暮ったい。
しかし、それゆえに音楽は常に今生まれたかばかりかのように生き生きとする。やっぱり、(モーツァルトの)世界には希望しかないようだ。

 

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