さくらカレッジ2012年4月講座 2012/6/30(Sat)

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「早わかりクラシック音楽入門講座」

内容
≪ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」 ≫
第1部:ベートーヴェンの生い立ち、不毛時期と傑作の森
第2部:傑作の森の頃の作品群、そして「熱情」ソナタ
※使用テキスト「オヤジのためのクラシック音楽入門(帯金充利著)」(新泉社)

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第1部
□ベートーヴェンの生い立ち、不毛時期と傑作の森
まずは、幼少期の父ヨハンからの虐待によるトラウマ、そしてアダルト・チルドレンの中でも「家族ヒーロー」という役割をベートーヴェンが演じていたのではないかという推論についてお話をしました。ピアニストとしても優秀だったベートーヴェンは子どもの頃からピアノ演奏によってお金を稼ぎ、父親の代わりに家族を養っていました。17歳の時には「父親の給料の半分を自分に支給するよう」選帝侯に嘆願書を出しているくらい家庭生活は逼迫し、父は相当周囲に迷惑をかけていたようでした。

そういう環境の中、音楽家として順調に出世し、25歳の時にはウィーン・デビュー、同時に作曲家としても認知されるようになりました。
ところで、数多の名作を残したベートーヴェンの生涯を振り返ってみると、実に4度ほど「不毛時期」のあることがわかります。1度目が1787年~89年というボン時代後期、2度目が1802年、ハイリゲンシュタットの遺書の前後の抑鬱状態の頃、そして3度目が1814年~16年頃の停滞期(以上が軽いうつ状態)、さらには1811年~12年の軽躁的な状態のときも作品はほとんど書かれていません。

ちなみに、本日のテーマ楽曲である「熱情」ソナタは1805年頃~年頃という、後にロマン・ローランが「傑作の森」と名づけた時期に生み出されたピアノ・ソナタの中でも非常にシンフォニックで技術的にも難しい傑作ですが、心身が充実していたこの時期にベートーヴェンはいくつもの作品を並行的に創作しました。そして、それらの作品は例えば「男性的なもの」あるいは「女性的なもの」というようにカテゴライズすることも可能です。
「熱情」ソナタや「運命」交響曲は男性的なもの、ピアノ協奏曲第4番やヴァイオリン協奏曲は女性的なものと言えるかもしれません。
ここで、ピアノ協奏曲第4番を抜粋で聴いていただきました。

①ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58~第1楽章冒頭
内田光子(ピアノ)
クルト・ザンデルリンク指揮ロイヤル・アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

そして、性質を異にする作品を彼が同時並行的に書いたことを確認するという意味も込め、第5交響曲と第6交響曲の第1楽章をそれぞれ映像で鑑賞しました。

②交響曲第5番ハ短調作品67~第1楽章
③交響曲第6番ヘ長調昨比68~第1楽章
クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(BD)

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休憩後はベートーヴェンのピアノ・ソナタについて、すなわち彼のソナタがピアノという楽器の発展とともに進化していったこと、32曲もの作品を生涯にわたって書き続けたことなどをお話しさせていただきました。
その上で、いわゆる三大ソナタを視聴しました。

④ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」~第2楽章
エリック・ハイドシェック(ピアノ)
⑤ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」(DVD)
クラウディオ・アラウ(ピアノ)(1970Live)

「熱情ソナタ」の聴きどころ、エピソードについてコメントの後、視聴。

⑥ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」
クラウディオ・アラウ(ピアノ)(1983Live)

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「熱情」はアラウ80歳時のニューヨークでのコンサートの模様です。
次回はヴィヴァルディの「四季」を採り上げます。

*主催:すみだ学習ガーデン
*会場:すみだ生涯学習センター