第17回 早わかりクラシック音楽講座 2008/7/6(Sun)

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「ショスタコーヴィチ~起死回生の交響曲第5番」

■内容
≪ ショスタコーヴィチ~起死回生の交響曲第5番 ≫
第1部:ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
第2部:全曲通し聴き&ロシア革命からソビエト政権へ~当時の社会的背景
第3部:交響曲第5番を聴く
-お茶とお菓子付-

第1部
□ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
①ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
モーリス・ラヴェルが1899年に作曲したピアノ曲。ベラスケスが描いた若い王女の肖像画にインスピレーションを受けて創った傑作。19世紀末のヨーロッパの雰囲気を髣髴とさせるアンニュイな調べは今日のような夏の暑い昼下がりにピッタリでした。
②ドビュッシー:喜びの島
同じくフランス印象派の巨匠、クロード・ドビュッシーが1904年に創ったピアノ独奏曲。ワトーの「シテール島への巡礼」からインスピレーションを受けて書かれています。華やかでかつ繊細で、ドビュッシーらしいこちらもアンニュイな雰囲気いっぱいの名曲。
同時代のロシアのインテリたちが憧れたまさにフランス、花の都パリのサロンを髣髴とさせるハイ・センスな音楽2曲を堪能していただきました。

写真 032

第2部
□全曲通し聴き&ロシア革命からソビエト政権へ~当時の社会的背景
今回は、まずショスタコーヴィチの交響曲第5番を先入観なく聴いていただこうと、具体的な講義をする前に全曲を試聴しました。
※レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団(1959年)

さすがに天下の名盤だけあり、聴き応え十分。初めて耳にする参加者も多く、おもちゃ箱のようだとか、暗くて重い印象だとか、様々な意見をいただきました。
一通りの試聴後、ショスタコーヴィチの生い立ち、ロシア革命当時のこと、スターリンの独裁が始まった当時の社会状況やショスタコーヴィチ自身の周辺で起こった出来事を振り返りながら、どういう状況でこの名曲が生み出されたのかを講義。さらにはショスタコーヴィチ独特の「二重言語(二枚舌)」に話が及び、カルメンの「ハバネラ」引用や「ソドレミ♭」音型の話を織り交ぜ、いくつか抜粋で音盤を聴きながら第5交響曲に対する知識を深めていきました。

参考CD
①ビゼー:歌劇「カルメン」~ハバネラ
アグネス・バルツァ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
③プロコフィエフ:交響曲第2番
ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
④ショスタコーヴィチ:交響曲第4番
ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団

写真 034

写真 035

第3部
□交響曲第5番を聴く
ある程度の知識を頭に入れた上で今度は楽曲の流れをつかみながら全曲を聴き通しました。
※エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1973.5.26Tokyo Live)

ムラヴィンスキーの初来日公演を記録する圧倒的名演奏。最後の聴衆のはじけるような拍手喝采までを中断なく聴きました。第1部で聴いたバーンスタインのフィナーレ、コーダの快速テンポに比して安定した重みを持つ初演指揮者ムラヴィンスキーの解釈はある意味絶対です。45分ほどの交響曲を結局2回通して聴いたわけで、疲れることなく、むしろあっという間の時間だったという感想をいただけたことから、やはりクラシック音楽は難しいものではなく、一定の知識を持ってじっくりと聴けば、楽しめるものだということをわかっていただけたことと思います。あとは何度も繰り返し聴くことが重要ですね。
ちなみに、8月28日(木)の19:00~、池袋・東京芸術劇場での「宇宿允人の世界」ではショスタコーヴィチの第5交響曲が演奏されます。例によってツアーを組む予定です。人数に限りがありますので、ご興味ある方はお早めに連絡をいただければチケットを確保いたします。(とにかく音楽は生を聴くことが大切です!)

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ところで、今回の講座の最大のテーマは、「自由」ということ。
人は「自由」を欲さんばかりに「枠」や「規制」を嫌うが、そもそも天才とは「束縛」や「限られた枠」の中から生まれてくるものなのではないかということです。確かにショスタコーヴィチは共産主義体制に翻弄され、二枚舌的に世渡り上手く生き延びた芸術家ですが、そういう「規制」や「生死」の狭間を綱渡り的に生きてきた経験が、数々の名作を生み出した原動力になったんだと想像できる。
「今」、自分自身が置かれた状況で、たとえそれがマイナスであっても、腐ることなく、最大限に「自分ができること」をやりきり、世間が認める結果を出すことが各々に科されたテーマなのではないのかということを感じさせられました。
今回は少人数での開催だったものの、とても意義のある楽しいひと時でした。
次回はいよいよグスタフ・マーラーの登場です。お楽しみに!