「マーラーの『ヴェルテル』:青春の記念碑~交響曲第1番」
内容
≪ マーラーの『ヴェルテル』:青春の記念碑~交響曲第1番 ≫
第1部:ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
第2部:グスタフ・マーラー-精神的トラウマ、ユダヤ性、そして恋愛遍歴と死への恐怖
第3部:交響曲第1番を聴く
-お茶とお菓子付-
第1部
□ピアノ生演奏(Piano:愛知とし子)
①マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲(愛知とし子編曲)
②モーツァルト:「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲ハ長調K.265
マーラーに所縁のある二人の作曲家の名作をとりあげました。交響曲第1番をちょうど書き上げた頃、マーラーはブダペストのハンガリー王立歌劇場監督の地位にありました。指揮者としても飛ぶ鳥を落とす勢いだった若きマーラーは、1890年、ウィーン音楽界の重鎮ヨハネス・ブラームスが観劇する中、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の舞台で大成功を収め、後のウィーンでの地位固めのきっかけを得たと言われています。さらに、その10日後には初演間もないイタリアのヴェリズモ・オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」で大成功を博し、このオペラが世界中のオペラ・ハウスにて演奏される足掛かりを作ったのです。
今日の1曲目は、その「カヴァレリア」から有名な「間奏曲」を愛知自身が編曲したピアノ版で、そして2曲目には、モーツァルトが作曲した通称「キラキラ星変奏曲」を演奏しました。
第2部
□グスタフ・マーラー-精神的トラウマ、ユダヤ性、そして恋愛遍歴と死への恐怖
静謐で美しいメロディが流れるかと思えば、突然堰を切ったように怒りの感情が爆発する、まさに「聖と俗」が入り乱れるマーラーの音楽。彼の内面に存在する(フロイトの指摘する)「母親への固執」が与える影響。そして行動力抜群で指揮者として順調に階段を上り詰めて行った歌劇場芸術監督としての仕事ぶりと数々の恋愛遍歴。さらには、マーラーの芸術に決定的な影響を与えたであろう最愛の妻アルマ(彼女はマーラーにとって聖女にして聖母であったという)との結婚生活などを振り返り、マーラーの創作した音楽に親しんでいただくためまずは抜粋でいくつか代表曲を聴きました。
①交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」~第2部終結(1972.6Live)
樋本栄(ソプラノ)、桂斗伎子(アルト)、伊藤富次郎(テノール)、三室尭(バリトン)
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー管弦楽団
大阪音楽大学、大阪メンズコーラス
アサヒコーラス/グリーン・エコー
アイヴィコーラス/関西歌劇団コードリベットコール
大阪・神戸・奈良放送児童合唱団ほか
②交響曲第5番嬰ハ短調~第4楽章アダージェット
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
マーラーの内面に潜む「ユダヤ性」についても簡単に考察しながら、複雑で重厚な彼の音楽に対する難解な印象を払拭し、青春の記念碑である第1交響曲理解のためのお話をしました。
マーラーも天才とはいえ、そこは人間。いかに環境や親からの影響を受け成り立っているかが、音楽を通してよく理解できます。とにかく長大な交響曲を聴いて、気に入ったフレーズを見つけるところから始めることが大事なのです。
第3部
□交響曲第1番を聴く
マーラーの愛弟子であったブルーノ・ワルターによる晩年の名録音を聴きました。第1交響曲はおおよそ50分ほどの手軽な曲で、かつ構成も限りなく古典的であるゆえ、初心者にはとっつきやすい作品です。ちょうどこの音楽を書いていた頃、まさにマーラーは恋愛の最中にあり、随所随所に「甘い恋愛」を連想させる楽想が流れます。
③交響曲第1番ニ長調
ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団
いや、名曲です。「喜怒哀楽」全ての感情の坩堝です。感動します。
ところで、終了間際には、バーンスタイン&ACOの第9交響曲のフィナーレを抜粋で聴きました。今回は参加者に女性が多く、初めてのマーラー体験にもかかわらず、第1より第9の方が好きだという人が多かったことにびっくりしました(当然か?)。時間の関係で頭の5分、終結の5分ほどしか聴けませんでしたが・・・。
いずれまたマーラーをとりあげる時があったらば、じっくりと鑑賞したいと思っております。
あっという間の3時間。ご参加いただいた方々と終了後、例によって懇親会。
ユダヤについて、そして軽く恋愛論、芸術論を戦わせながら(大袈裟ですが)、3時間弱盛り上がりました。みなさま、ありがとうございました。今回もとても楽しかったです。
ちなみに、次回9月はちょっと違った切口でお送りする予定です。↓
1830年、ヨーロッパを席巻した革命の嵐の中、ショパンやシューマン、ベルリオーズといった大作曲家が傑作を残しました。歴史で切っての「クラシック音楽講座」。お楽しみに!