No.002 「引越し魔 ベートーヴェン」 2007/5/19

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つい先日意を決し、12年ぶりに引越しをした。 もともと面倒臭がりの性格ゆえ、以前に引越しをしてからあっという間の年月であった。とにかくCDやら書籍やらいわゆる嗜好品の荷物が膨大であるゆえ、梱包も荷解きもままならない。音楽関係の雑誌となると相当数におよび、何が必要で何が不要かを短時間で判断は、なかなかし難い。全部を持って移動するわけにもいかず、ましてや簡単に捨てるにはこれまた勇気がいる。前回もそうだったが、捨てた後すぐに必要になるシチュエーションが訪れるのである。妙なものだ。

何はともあれ、賃貸マンションやアパートの場合どうも5年以上一所に落ち着いてしまうのは「氣」的にあまり良くないらしい。「水」は流れて生きているのであり、同じところに滞留すると腐ってしまうように人間もそうだということだろう。確かに共同住宅の場合、周りの住人とはほとんど顔を合わせることもなく、何年かおきに人が入れ替わる。どんな輩が住んでいるのかもわからないわけだから自分がどんな影響を受けてしまっているか見当もつかない。恐ろしいことだ。

ところで、楽聖ベートーヴェンは引越し魔としても知られている。ウィーンだけでも80回以上引越しをしているらしい。ありえない・・・。その理由は 2つほどある。ひとつは、ひんぱんに住居を変えていないと、彼の作品を家の外で聞いて盗作し、ベートーヴェンより早く出版してしまう輩がいたため。もうひとつは、彼が夜中に大声を出したり大音量で楽器を弾いたり歌ったり奇行(?)を繰り返したため引越しせざるを得なかったということ。どうも後者の理由のほうの信憑性が高いように思える。というのも、前回のコラムでも触れたが、ベートーヴェンは少年期の成育歴に幼児虐待から来るトラウマ(心の傷)を抱えており、その傷は青年期以降に社会的な問題を引き起こす原因になりうるからだ。天才はやはり天才。他人とうまくやっていくことは難しかったのかもしれない。生涯独身を通したということから考えてみても・・・ 。