No.031 「音楽を聴くのも全身全霊で、真剣に」 2015/9/25

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昨年10月を最後にしばらく「早わかりクラシック音楽講座」を開催していないが、ここのところ「クラシック音楽を真剣に聴くこと」がいかに重要かを思い知らされる出来事がいくつかあったので書いておく。

先日、「やぶちゃんのガチ聞きライブ」に参戦したときのこと。やぶちゃんこと、藪原秀樹さんは「聞く力」を養うことで自分の心がわかり、自分の想いを相手に的確に伝えることができるという「わもん」を実践され、世界に広めようとしていらっしゃる方だが、ライブで実際にご本人にお会いし、その力を目の当たりにさせていただいた。なるほど、コミュニケーションにおいて言葉以上に音の強弱や高低、ブレス(呼吸)が重要で、いわば「見えない音」にその人の心のすべてが投影されるという事実(これまで意識したことはなかったが、そういえば僕自身もワークショップにおいて「声のトーン」の微妙な変化をとらえてきた。しかし、それは無意識のことで、そういう技術を他人に教えることなどできるものではないと僕は思っていたのである)。何より藪原さんのすごいところは、他人に系統だてて「聞く力(そしてそれによって他人の心を開くことができる)」を多くの人々に伝授し、しかも練磨できるほどのものにしているところ。
音を的確に捉えることの重要性にあらためて気づけたことは僕にとってとても有効な出来事だった。

ちなみに、クラシック音楽を40年近く「真剣に」聴き続けて来て実感するのは、音楽においての「音の変化の妙」や「間(ま)の巧さ」、あるいは「呼吸の深さ」がその演奏の良し悪しを決定するほど大きな力を持つということ。もちろん演奏者は皆抜群の技術を持った人たちなので、うまいのは当然なわけで、その上に一層の感動を与えられるような「心」を刻印するには、やっぱり音そのものをいかに大事にするか、そして「静寂」である「間(ま)」をいかにうまく使うか、あるいはいかに呼吸を深くとるかなのだと思うのである。

その上で、先日偶々読み返していた「MIND HACK」。そこではこんな文章に出会った。

人の話し声は、脳にとって、ただの音の集合ではない。脳での扱われ方は、話し声と他の音とでは大きく異なっている。通常の音は大部分が脳の右半球で処理されるのに対し、話し声は、主に左半球で処理される。
トム・スタッフォード&マット・ウェブ著/夏目大訳「MIND HACKS―実験で知る脳と心のシステム」(オライリー・ジャパン)P185

納得。
やっぱり現代人にとって、「音楽をする」ことと同じくらい「音楽を全身全霊で聴く」ことは大切だと痛感する。右脳が鈍化しているといわれる僕たちが、才能を開花させ、全脳を駆使できるようになるのに言葉のない音楽、すなわちクラシック音楽(中でも器楽曲)を聴くことがどれほどの効果を発揮するのか!それこそ「全身全霊、真剣に」というのがポイントだと思うのだ。

「クラシック音楽を全身全霊で聴く」ことで自分磨き。
そんなことを日々考えていたら、1年ほど前からクラシック音楽に興味を持つようになったとか、最近クラシック音楽にはまっているという殊勝な方々にお会いする機会が増えた。皆さん、クラシック音楽の愉しみ方をもっと知りたいとおっしゃる。
久しぶりにまた「早わかりクラシック音楽講座」を開催したくなった。
今度は「聞く力」をテーマにやってみようか。