振り返ってみると、2017年は、例年になくたくさんのコンサートに出向き、素晴らしい演奏に遭遇することができました。音盤やiPodで聴く「過去の名演奏」も捨てたものではありませんが、時間と空間の芸術である音楽は、やっぱり実演ならではの空気感、あるいはホールの(聴衆の咳払いなどの)自然音あってこそ。
昨日は、おそらく今年最後の詣でなるだろうサントリーホールでの第九。教え子が連れて行ってほしいというので、早々とチケットを入手、共にベートーヴェンの傑作を楽しみました。彼女が感動してとても喜んでいる姿に僕も感動。音楽を体感する素晴らしさここにあり。
ひとりでも多くの人たちにクラシック音楽の素晴らしさを知っていただくため来年もまた啓蒙活動に励みたいと思っております。
さて、数えてみると2017年のコンサート詣では何と43回(過去最高)!
中でも印象に残っているのが、5月の読響定期でのロジェストヴェンスキー指揮のブルックナー第5交響曲。何と珍しいフランツ・シャルクによる改訂版での(虚仮威し的?)大演奏!!ブルックナーの透明感は(ある意味)損なわれ、まったく違った印象の音楽になり果てているも、演奏者の力量によって「改悪」を超える素晴らしさを記録する、超絶名演奏でした。終楽章のバンダを伴った圧倒的コーダの興奮はいまだに忘れられない思い出です。
また、今年は演奏会形式のオペラもいくつか体験しましたが、9月にみなとみらいで聴いたパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響による「ドン・ジョヴァンニ」は舞台の演出、歌手の陣容ともども絶品でした(12月に川崎で聴いたジョナサン・ノット指揮東響も素晴らしかったですが、全体的にはヤルヴィに軍配があがるでしょう)。あるいは、11月のサントリーでのカンブルラン指揮読響の「アッシジの聖フランチェスコ」(全曲本邦初演!)や12月のオペラシティでのエマールの「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」は、キリスト者オリヴィエ・メシアンの神髄を体感できる希少な機会で、崇高な音楽体験でした。
ちなみに、室内楽では、7月のハーゲン・クァルテットによるショスタコーヴィチ&シューベルト・ツィクルスが渾身の美しさ。死に直面する二人の大作曲家の、彼岸を見つめる何とも暗く透明な世界を見事に表出するハーゲンのアンサンブルは最高でした。
今年も残すところ10日。
今後、世界的に様々な問題が一層浮上するであろう不安定な時代にこそ、時にはすべてを忘れ、音楽のシャワーに浸る幸福感とでも言いましょうか、2018年もまたこれまで以上に「音楽の素晴らしさ」を発信していこうと思っております。
引き続き応援よろしくお願いします。