ハーゲン・クァルテット シューベルト&ショスタコーヴィチ ツィクルスⅡ

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、極めて個人的な信条告白のような作品だ。
見事な自律的対話。
弦楽四重奏こそは、やはり実演に触れてその真価が理解できるというもの。時折、アンサンブルが激昂するも、ほぼ静謐な中で語られる、死者を弔う意図を持つ音楽は、最初から最後まで息つく間もなく激しい感情移入を伴い、優しく、そして尊かった。
それにしてもハーゲン・クァルテットは、ちょうど20年前の夏にザルツブルク音楽祭で聴いたときとは当然風貌は熟年の境地にあり、4人によって紡がれる音楽も一層の深みを獲得した完璧なものとなっていた。
一部の隙もない、そして聴衆に一定の緊張感を強いる儚さ、また美しさ。
大変なクァルテットだと僕は思った。

第1楽章アレグレットからメンバー各々の澄んだ音色がはっきりと認識でき、また、それぞれの音が重なり合うときの崇高さというのか、この世のものとは思えぬ(最晩年のショスタコーヴィチの)音楽に迷わず惹きつけられた。第2楽章アダージョの、深い哀しみもさることながら、続いて奏された第3楽章アレグレット前半の激しい合奏の際の、一糸乱れぬ呼吸と、奏でられる音楽のあまりの美しさに僕は固唾を飲んだ。
実に生命力に満ちる死の讃歌。
弦楽四重奏曲とは、実演に触れてこそのもの。

ハーゲン・プロジェクト2017
シューベルト&ショスタコーヴィチ ツィクルスⅡ
2017年7月4日(火)19時開演
トッパンホール
・ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第14番嬰ヘ長調作品142
休憩
・シューベルト:弦楽四重奏曲第14番ニ短調D810「死と乙女」
~アンコール
・ハイドン:弦楽四重奏曲第78番変ロ長調作品76-4「日の出」~第2楽章アダージョ
ハーゲン・クァルテット
ルーカス・ハーゲン(第1ヴァイオリン)
ライナー・シュミット(第2ヴァイオリン)
ヴェロニカ・ハーゲン(ヴィオラ)
クレメンス・ハーゲン(チェロ)

後半はシューベルトの「死と乙女」。
息の長い、いかにもシューベルトらしい美しい旋律を持つ音楽が、4つの弦楽器によって生き生きと奏でられる瞬間を目の当たりにし、僕は幾度も心震えた。何より、ハーゲン3兄弟の気の流れというのか、見事に循環するエネルギーの素晴らしさ。なるほど、久しぶりに彼らの実演に触れて思うのは、兄弟3人の(一体化する)鉄壁のアンサンブルに、第2ヴァイオリンのライナー・シュミットが外から客観的に支え、他にはない強力な四重奏を形成しているというのがこのクァルテットの型のようだ。もちろん、トゥッティにおいては4人が完璧にひとつになるのだからその音楽の完全さは言うまでもない。
第1楽章アレグロの壮絶な音楽はとても優しかった。また、第2楽章アンダンテ・コン・モートの歌は、メロディ・メイカー、シューベルトの真骨頂であり、ここでのハーゲンの想い入れたっぷりのアンサンブルに涙した。そして、短い第3楽章スケルツォの後、いつ果てるとも知らぬ終楽章プレストでの、確信を持って奏される音楽の疾走する悲劇!!何というインパクト!!僕はシューベルト晩年の類を見ない音楽に怖れを抱きながら没頭した。実に名曲の名演奏。

アンコールのハイドンも絶品。

 

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2 COMMENTS

雅之

シューベルトは、ブルックナーに繋がりマーラーに繋がり、ショスタコにまで繋がっているわけですか。まったく今更ながら大した作曲家ですね。

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岡本 浩和

>雅之様

>まったく今更ながら大した作曲家ですね

今宵は第3夜で、両作曲家の第15番を聴いてきましたが、言葉にならない壮絶さに感動の極みです。
ショスタコーヴィチは偉大です。しかし、おっしゃるようにシューベルトはもっと偉大なように感じた夜でした。

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