- 魂の結びつきのない肉の楽しみは獣的なものにすぎぬ。あとに気高い感情のあとかたもなく、むしろ悔恨がのこる。
(1817年)
- 静穏と自由は最大の富だ。
(1817年)
- もう一度おまえの芸術のために、社会生活の些事をすべて犠牲にせよ! ああ、万事をしろしめす神! 永遠を予見するもの。
朽ちて死すべき人間の好運非運皆知れり。
(1818年)
- 愛だけが—しかり、愛だけが、おまえに最も幸福な生活を与えることができる。—ああ、神よ、わたしの徳性をかためてくれる女性を、わたしのものとして与えられた女性を、最後に見させたまえ。
(1819年)
- 世間というものは、諂われることを好む王様みたいなもので、諂われれば機嫌をよくしている。しかし、真の芸術というものは頑固なもので、諂われて自らを満足させていられるようなものではない。名声高き芸術家は、たとえそれがまだ日のさしこまない胎内から芽生えたばかりにすぎぬものであっても、彼の最初の作品が最良のものであるとの考えをつねに固く信じているものである。
(1820年)
小松雄一郎訳編「ベートーヴェン 音楽ノート」(岩波文庫)より抜粋