浪花のモーツァルト キダ・タローのほんまにすべて(2010)

上岡龍太郎さんが亡くなられた。ネット上では彼を慕う芸人他数多の追悼の辞が寄せられているが、中でも興味深いのは御年92になられるキダ・タローさんの綴った思い出。
関西では誰もが知る著名な作曲家で、子どもの頃からテレビによく出られていて、かつコマーシャルソングや何やら聴けば関西人なら必ず知っているという楽曲も多く、何年か前に仕入れた「キダ・タローのほんまにすべて」という音盤セットを聴いて震えたくらい。氏は「浪花のモーツァルト」の異名をとるが、いわゆる応用音楽を書かせれば天下一品であり、その意味では「モーツァルト」とはあながち言い過ぎではない。

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気の利いた、そして上岡さんにはできなかった小節の利いた言葉に、そのままキダ・タローさんの音楽を僕は重ね合わせた。

30余年前、六本木にあったWAVEで「浪花のモーツァルト」という音盤を見かけた。洒落で買おうとも思ったが、そのときは手が伸びなかった。何年もした後、やっぱりほしいと思い出し、あちこち探してもそのセットはどこにもなかった(今ではAmazonで中古で簡単に手に入るが)。
ところが、2010年になって装い新たにさらに楽曲が追加されリリースされたのがこれ。僕は、今度は迷いなく買った。

浪花のモーツァルト キダ・タロー生誕80周年記念盤
キダ・タローのほんまにすべて
製作総指揮:キダ・タロー
イラスト:成瀬國晴
企画:上井尾勉(昭和プロダクション)、奥川和昭(エー・ビー・シーメディアコム)、西山拓幸、田中健二郎

1枚目は「日清出前一丁」をはじめとするコマーシャルソング・テーマソング篇、2枚目は「ABCヤングリクエスト」を冒頭に置いたラジオ・TVテーマソング篇、そして3枚目が「アホの坂田」などの歌謡曲篇という合計100曲もの傑作選。

僕は関西で生まれ育った。キダ・タローの厳選100曲を俯瞰して見ると、子どもの頃にテレビで耳にしたものがたくさんあって、あれもこれもキダ・タローの作曲だったことを知るにつけ、そして記憶の底に音楽が残っていることを考えるにつけ、音楽による刷り込みの怖ろしさ(?)を思う。

あまりに懐かしい「プロポーズ大作戦」のテーマ曲に涙がこぼれる。

ビッグバンド出身の私は、この手の曲は楽しくて仕方ありません。特にサビはトロンボーンの最低音B♭を使いたい為に、すべてのkeyをE♭に統一しました。
~PKCP-2064-6ライナーノーツ

キダさんによる楽曲解説、というか思い出が面白い。
あるいは、「ノンストップゲーム」。司会が横山ノック、桂文珍、板東英二という布陣!!

オーケストラ、コーラスの録音も終り、あとは歌入れのみ。スタジオに現れた島田紳助さん(歌の予定)。「俺、何も聞いてまへんで!」——連絡ミスです。。。構成作家と相談して、慌てて全部セリフにしました。
~同上ライナーノーツ

そして、デュークエイセスが歌う「かに道楽」のコマーシャルソングも素敵。

「かに道楽」が発展し、CMも、“よりグレードの高いものに”という発注があり、オーケストラ編成をふやし、デュークエイセスにお願いしました。
~同上ライナーノーツ

僕にとっても子どもの頃の思い出が詰まった音盤セット。
キダ・タローさんにはぜひとも長生きしていただきたい。

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