ベジャールの思い出

先日モーリス・ベジャールが亡くなった。80歳だという。映像で残っている彼のきびきびした精悍な姿を見慣れているせいか、まだ50代、60代なのではという錯覚に捉われていた。
もう20年近く前になるが、当時モーリス・ベジャール・バレエ団を旗揚げしたばかりの頃で、ジョルジュ・ドンやミシェル・ガスカールなど全盛期の頃のそうそうたるメンバーを引き連れ、来日公演をやっていた古き良き時代で、伝説の天才ダンサーたち見たさに、会場はいつも若い女性たちで熱気むんむんだったことを昨日のように思い出す。

僕が生でベジャールのバレエを見たのも、ドンが踊っているの観たのもこの時が最初。実は、その時の公演時に友人が寿司屋のカウンターで隣に座ったフランス人らしき人が注文に困っていたので助けてあげたところ、何とベジャール・バレエ団のダンサーだったという。そのつてで早速舞台裏に来いというメッセージをもらい、何日か後の公演の際、確かNHKホールだったと思うのだが、控え室にお邪魔したことがあった。
その時にベジャールに会ったし、ドンにも会った。というより、見た、という方が正しい。まだまだ還暦前後の若きベジャール。僕が直接お会いしたのはその1回きり。とても感激したことを覚えている。とにかく懐かしい。
その後、91年にジョルジュ・ドンが亡くなるまで来日ごとに彼らのバレエを追い続けた。「春の祭典」も観た。「ニーベルングの指環」も観た。ドンの最後の「ボレロ」も観た。そして「ニジンスキー・神の道化」も観た。
しかし、僕自身は残念ながらオン・タイムではないのだが、思うにやっぱり1980年頃の二十世紀バレエ団の頃が最高である。

その全盛期のドキュメンタリーとして素晴らしい映画が残されている。

アダージェット~モーリス・ベジャールの時間

ヴェニスでの「エロス・タナトス」をメインにした公演のドキュメント。バレエ・ファン、ベジャール・ファン以外はひょっとするとあまりピンと来ないかもしれない。。
しかし、「エロス・タナトス」のクライマックスでもある、ドンの「アダージェット」や「ボレロ」の映像美は、後にスタジオで撮影されたDVD以上の躍動感とエネルギーを感じさせる。ドンやベジャールの言葉の一つ一つも時には哲学的、時には芸術的かつ繊細で、とてもウィットに富んでいて、それを聞くだけでも価値のある一枚だと僕は思うのである。
ちなみに、ヴィヴァルディの音楽をテーマにした森下洋子&ジョルジュ・ドンによる「ライト」、は「愛」の切なさを表現する「美」の極致。必見!

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