永遠のジョルジュ・ドン

10月13日に東京オペラシティ・リサイタルホールで行われる*AK* the piano duoコンサートの事前特別講座をその前の週に実施する(10月6日)。メイン・プログラムであるストラヴィンスキーの「春の祭典」についてクラシック音楽入門者(ほとんど僕の友人だが・・・)のために解説をし、演奏会当日目いっぱい楽しんでいただこうという主旨で企画したのである。「春の祭典」、通称「ハルサイ」は異常ともいえるエネルギーを内在しており、過去に様々な芸術的スキャンダルを振り撒いた20世紀が生んだ大傑作。
LP時代名盤とされていたサー・コリン・デイヴィス&王立アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団盤を軸にあれこれ資料を作成したあと、ふと思い立ち、モーリス・ベジャール振付・二十世紀バレエ団の「春の祭典」を観た。かれこれ20年近く前NHK-BSで放映されたものを録画しておいたものを久々に取り出したのだ(「ハルサイ」は2度ほど生でも体験している。確か1990年頃にベジャール・バレエ団が来日した際、最後の「ハルサイ」ということで上野に足を運んだと記憶している)。ビデオにしろ、生の舞台にしろ本当に衝撃的で、作曲者自身はバレエ作品としての物語性を次第に強く否定するようになったのだが、やはりこれは誰が何と言っても「バレエ音楽」なんだとあらためて感じさせられたことをまざまざと思い出す。

当時はジョルジュ・ドンが存命中で、彼が出演する東京公演はほとんど全て観た。最後のボレロも東京文化会館の1階1列目真正面で拝んだ。アダージェットは確か2階の正面1列目だったと思う。そして「ニジンスキー・神の道化」の再演も観た。確かこれはできたばかりの東急文化村のシアターコクーンにて。今、思い出しただけでも鳥肌が立つようなモダン・バレエ体験。ドンが亡くなって急速にバレエ熱が冷めたので、それ以降はほとんど観なくなってしまったのだが・・・。

二十世紀バレエ団の芸術(DVD)
モーリス・ベジャール(振付)
ジョルジュ・ドン、ショナ・ミルク(ソリスト)

※残念ながら廃盤のようだ。

もともとは女性舞踊手のために振付された最も有名なベジャール作品。しかし、男性舞踊手であるジョルジュ・ドンによって「ボレロ」が生まれ変わったといっても言い過ぎではない。それほどこのバレエはドンなくして語れないものである。ベジャールの作品には「両性具有」を表現テーマとして扱ったものが多い。この作品もニュートラルな踊り手の存在があって初めて成立するものであり、ドン亡き後様々な踊り手が挑戦しているが、彼を超えるダンサーは出ていない。
まことにジョルジュ・ドンは何物にも代え難い二十世紀が生んだ不世出のダンサーであった。

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3 COMMENTS

アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » ジュリーニのドビュッシー&ラヴェル

[…] 本日の「早わかりクラシック音楽入門講座」では、チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルによる「ボレロ」の後、モーリス・ベジャール振付によるジョルジュ・ドンの「ボレロ」を観ていただいた。コンサートとバレエとを比較する意味合いもあってのことだが、それより何よりチェリビダッケの丁寧な、というか遅々としたスピードが一層際立ち、やっぱり僕的にはクリュイタンスのような、洒落て軽快なテンポの方が活き活き感が伝わり、好きだと思ったことが大いなる気づき。 ただし、チェリビダッケのテンポでいくと楽曲の隅々までもがしっかり見通せてより深く「ボレロ」という音楽の構成が読み取れたので良かった(それにしてもあの流れを維持するのに奏者は大変だろうなとも思ったけれど)。 […]

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » ストラヴィンスキーとバレエ・リュス

[…] 100年前のパリのオペラ座で、あるいはシャンゼリゼ劇場で繰り広げられたバレエ・リュスの衝撃を僕も体験してみたかった・・・、とこれまで何度思ったことか(決して叶わないけれど)。5年ほど前だったか、目黒の庭園美術館でヴァスラフ・ニジンスキーの振付による「牧神の午後」と「薔薇の精」、そして「ペトルーシュカ」を観た時は相当の興奮を覚えたが、20年も前からバレエ・マガジン誌上でその詳細について知り、最も興味を持ちながらこの目で確認する術がなかった「春の祭典」の上映がなかったことには少しがっかりしたものだった。 ジョルジュ・ドンが存命の頃、そう、モーリス・ベジャール率いるベジャール・バレエ団がまだ二十世紀バレエ団と名乗っていた頃、僕は彼らのバレエにはまって、モダン・バレエの世界に開眼した。20数年前の、ベジャールが最も熱い頃だ(と僕は信じている)。それこそ追っかけのように彼らが来日するたびに公演に訪れ、ある時は舞台裏にまで招待を受け(とある寿司屋で隣に座る外国人に話しかけたところそれが偶然ベジャール・バレエ団の一員だった)、ベジャール本人にも直接会わせてもらえた。そしてまた、上野ではドンの踊る「ボレロ」も「アダージェット」も涙しながら心震わせて観たし、「春の祭典」も心底感激した。さらには、あの頃はまだ僕のそれを受け止める器が小さかったせいもあってかあまりよく理解できなかったが「ニジンスキー・神の道化」のステージも観た(こちらは開館間もない渋谷のBunkamuraで)。そのどれもが素晴らしかった。いまだに記憶に残る宝物のような体験だが、でもやっぱりニジンスキー版の「春の祭典」をいつかじっくりと鑑賞してみたいという夢は消えることはなかった。 […]

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » ジャパンの「孤独な影」

[…] そういえば「イリュミナシオン」といえば、20世紀バレエ団の演目で、昔ジョルジュ・ドンをメインにした「若いダンサーへの手紙」というレーザー・ディスクで初めてみた時に衝撃を受けたことを思い出した。同演目の中の「旅」というパフォーマンスで、ピエール・アンリの電子音楽によってドンがモダンというよりほとんど前衛といっていいダンスを披露するそれは僕にとって心から驚きだった。「ボレロ」や「アダージェット」や、そういう妖艶でロマンティックな彼の踊りしか知らなかった僕にとってはともかく新鮮だった。あのLD廃盤になって久しく、未だにDVDあるいはBD化されないが、惜しいことだ。とても良い映像作品なのに。 […]

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