ヨッフムのオルフ「カルミナ・ブラーナ」を聴いて思ふ

orff_carmina_burana_jochum極寒なのだが、澄んだ空気に一瞬春を感じた。
カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」第3部「愛の誘い」にある『今こそ愉悦の季節』。
背後に響く少年合唱の急進的な音楽にほだされ、いよいよ乙女(ソプラノ)は男(バリトン)の求愛に落とされそうになる。

とてもいとしいお方、
あなたの前にこの身をそっくり投げ出しますわ。

おい、おい・・・、なんて軽い・・・。そして、愛を讃えるフィナーレの大合唱をはさみ、最後は「おお、運の女神よ」の再現。ここは黙っていても(たとえ歌詞の内容を知らずとも)つい身体を揺らしてしまう場面だ。

おお、運の女神よ、
まるで月とそっくりに、
いつも姿態が変わりやすく、
しょっちゅう大きくなってみたり、
あるいは小さくなったりする。
まったく呪わしいこの人生は、
意地悪な目つきをすると思えば、
今度はまた愛想よくして見せる。
ふざけた気持ちで、
ときには窮乏を、
ときには権力を、
氷のように融き消して見せ。

気のせいか、レッド・ツェッペリンの「ケラウズランブラ」が想起された。80年代のテクノ・ミュージックを先取りするようなリズミカルな第1部と重い嘆き調のギター・リフの出る中間部、そしてジョンジーのキーボード主体の後半部に流れ込むという壮大な構成が同じく心を鷲づかみにする。
歌詞は直訳不可能。しかし、僕たちの目の前に起こることは真実ではなく、すべてが嘘だとプラントは歌う。

君はどこへ行こうとしていたの?君はどこを助けようとしていたんだ?君のお家はどこだった?

僕たちはどこから来てどこへ帰るのか?そして、この地に来て何をしようとしているのか?真に深い問いかけのように聞こえなくもない。
すべては月とそっくりに姿態は変わる。無常ということだ。
しかし、そんな中においても人々は酒を飲み、酔い痴れ、そして恋の愉悦に浸る。
何という充実!!(笑)

オルフ:カルミナ・ブラーナ
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
シューネベルク少年合唱団
オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団(1967.10録音)

これは「カルミナ・ブラーナ」の最初の名盤といわれるもの(特に、オルフ自身が監修していること、つまり、お墨付きだということ)。そしてレコーディングから47年の時を経てもいまだに色褪せない傑作である。あまりに人間臭いドラマが、ほとんど指揮者の等身大を表現するかのように音の隅々に行き渡る。

春の愉しい面ざしが
この世界に近づいて来る、
冬の鋭い寒さは、
負けてもう逃げてゆく。

※「カルミナ・ブラーナ」訳(太字)は、呉茂一氏による。

 


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2 COMMENTS

くまがい

岡本さんくまがいです。ごぶさたしています。
いつも楽しく拝見して勉強させてもらってます。
カルミナ・ブラーナいいですね、
ご存知とは思いますが 来週末、N響はルイージで
カルミナ・ブラーナです。
チケットけっこう残っています。
私は25日に行く予定です。よかったらどうぞ。
昔サバリッシュはよかった記憶がありますが
ルイージも期待できそうですね。
2014年1月25日(土) 開場 5:00pm 開演 6:00pm
2014年1月26日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
N響定期
指揮:ファビオ・ルイージ
カルミナ・ブラーナ
では また、怪獣映画会以外に
クラオタ会にもぜひ復帰ください。

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岡本 浩和

>くまがいさん
あけましておめでうございます。
来週N響でやるんでしたか!!
基本コンサートはノーチェックなので知りませんでした。ありがとうございます。
せっかくなので僕も25日に行くつもりです。
会場でお会いしましょう。
今年もよろしくお願いいたします。

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